02 「友達」
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、俺は持っていた荷物を置いてはやてに近づく。最初の頃は戸惑いもしたが、今でははやての移動に手を貸すのも慣れたものだ。
「ありがとう」
「これくらい別にいいさ」
俺が返事を返すと、はやては自分の隣をポンポンと叩いた。隣に座ってということらしい。断る理由もないため、荷物を手に取って彼女の隣に座った。
「さっきから気になっとったんやけど、それ何?」
分かっているのに聞いていそうだなと思いつつも、中身を取り出すことにした。
まだ少し早いのだが、俺が持ってきた荷物ははやてへのプレゼントだ。ほら、と言って渡すと、すぐに彼女はそれを広げた。
「おっ、洋服やん。しかもフードにはたぬきさんの耳が付いとる。ショウくん、ええ趣味しとるなぁ」
「お姉さんぶった割には、子供っぽいので喜ぶんだな」
「わたし子供やもん」
「調子の良いやつ」
「そう褒めんといて」
「褒めてない……まったく」
はやての言動には呆れるが、喜んでくれているようなので安心した。洋服を眺める彼女をよそに、俺はもうひとつのプレゼントを取り出す。
「あとこれ」
「開けてええ?」
「ああ」
返事をすると、はやては綺麗に洋服をたたんで傍に置き、テーブルに置かれた白い箱を開けた。中身は俺が作ったはやて用の誕生日ケーキ。祝いの言葉ももちろん書いてあり、食べるのがはやてひとりなので小さめに作ってある。
「去年よりも上手くなっとる……何やろ、この妙な悔しさ。何ていうか、女の子として負けた感じ?」
「そんなの俺に聞くな。それにいいよ、食べないなら持って帰るから」
「あはは、冗談や。ちゃんと全部食べるから、いじわる言わんといて」
「別にいじわる……」
途中で止まってしまったのは、はやてが抱きついてきたからだ。突然だったことや体格がほとんど変わらないこともあって押し倒されそうになったため、俺は反射的に倒れそうになる身体を腕で支えた。
「ありがとな……ほんまありがとう……」
お礼を言う彼女の声は少し震えていた。抱き締めているのは、俺に顔を見られないようにするためのようだ。
悲しくて泣いているわけじゃない相手に泣くなとは言えない。しばらくこのままでいようと思うが、何か言ってあげるべきなのではないかとも思う。こういうときは何を言えばいいのだろう……。
「……いつも今くらい素直になればいいのに」
「そんなん……できるわけないやろ。分かってるくせに……」
「分かってるけどさ……俺くらいには素直に何でも言ってくれてもいいんじゃないか? ふたりのときとかは、別に気持ちを隠す必要はないだろ?」
「そうやけど…………多分無理や。もう癖になっとるもん」
「それも……そうだな」
長年の習慣を一気に変えることはできないものだ。
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