第四章
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巨人はこう言った。彼自身にも背番号2を用意してあると伝えた。ただし彼は本来のキャッチャーではなくその強肩を活かした外野手にするつもりだったようだ。だがここで思わぬ伏兵が現われた。
阪神であった。かって王貞治を巨人に強奪されたことを恨んでいた彼等はここで復讐に出たのだ。何とドラフトで彼等は田淵を一位指名した。
そして彼との交渉権を獲得したのは阪神であった。それを聞いた田淵は落胆した。
「巨人以外に入るつもりはないのに・・・・・・」
彼は東京生まれの東京育ちであった。裕福な家庭に育ち何不自由なく育った。東京を離れたくはなかったしそれに彼自身大の巨人ファンであった。
だが阪神の熱意ある説得に折れた。こうして彼は阪神のユニフォームを着ることになった。これが彼の野球人生を決定付けた。
彼は高校野球では甲子園に出たことはなかった。憧れの地ではあった。まさかこうしてここを本拠地にして野球をするとは全く考えられなかった。
甲子園で打つ。すると観客が熱狂的な声援を送る。それを聞いた彼はそれに魅せられた。
「また打ちたいな」
その思いが彼を阪神の田淵にした。
特に彼は巨人戦で燃えた。これは阪神の選手なら誰もがそうであった。江夏も村山もそうであった。
田淵はホームランを打つことに燃えた。大きく弧を描く独特にアーチを放つ。それは阪神ファンの歓喜の念を込めてスタンド
に飛び込む。
歓喜の中彼はダイアモンドをゆっくりと回る。そして一塁で王を見る。そして二塁を回り三塁で長嶋を見る。それからホームを踏むのが最高だった。
「阪神にずっといたいわ」
「おいおい、入団の時あんなん言っとったのは誰や」
そう意地悪く冷やかす者もいた。だが彼は阪神の田淵となっていた。
「確かに田淵のあの時の打った球は凄かった」
大叔父は言った。
「しかし福本の守備はもっと凄かった」
何とホームランになるボールを取ったのである。もし入ればスリーランになるところであった。それを見た田淵は呆然となった。長嶋も人間技じゃない、とまで言った。
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