第二章
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った。何と信任投票をさせたのだ。
結果は圧倒的多数で信任であった。だが西本は言った。
「不信任が七人もおる。こんな状況では監督をやれん!」
「えっ・・・・・・」
これに驚いたのは選手やコーチだけではなかった。フロントも流石に驚いた。
「あの、監督殆どの選手が監督を信頼しておりますが」
「いや」
西本はその言葉に対し首を横に振った。
「百パーセントやあらへん。そんな程度の信頼やったら野球にならへんのや」
彼はそう言った。
清廉潔白な男であった。酒も飲まずいつも野球のことだけを考えていた。真摯で常に熱い情熱を露にしていたのだ。
その心が選手達、そしてフロントにも伝わった。阪急はこれで生まれ変わったのであった。
西本の選手に対する態度はそれまでもそれ以降も変わらなかった。常に選手達を手取り足取り教え時には拳骨を出した。だが選手達はそこに彼の本心を見たのだ。
「この人は信用できる」
「ああ、俺達のことを本当に考えてくれている」
彼等は西本についていくことを決心した。そしてその時一人の助っ人が阪急にいた。
「俺のパワーと頭脳で阪急を優勝させてやる」
その男の名をスペンサーといった。大柄で激しい気性の持ち主であった。ホームへも果敢に突入しキャッチャーを吹き飛ばした。そして点をもぎ取る男であった。
彼は次々と自分の考えを西本に進言した。そして西本はそれを受け入れた。時には大丈夫か、と思う時もあったという。
だがその頭脳が阪急を強いチームに変えたのだ。スライディデイングで野手やキャッチャーを吹き飛ばす。ゴロから得点する。こうして阪急は確実に勝利を収めていった。
ある時彼は西本にこう言った。
「西宮のフェンスを少し前にやって欲しいんだけれど」
「何でや?」
西本は尋ねた。
「その方が俺のホームランがよく出るからさ」
彼はニンマリと笑ってこう言った。
「成程な」
これで決まりだった。西宮のフェンスは何時の間にか狭くなっていた。
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