第3部:学祭2日目
第14話『唯誠(ゆいま)』
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を引いておくか。引こう」
やがて皆、ごめんねといいつつ、そそくさと立ち去ってしまった。
「ちょっと待ちなよ。甘露寺さんの意向を聞かなくちゃあ」
リーダーはあわてて、その後を追う。
冷めた視線で、律・世界・刹那はそれを見送る。
「マコちゃーーーーーーーーーーーん!! 怖かったよーーーーーーーーーーーー!!!」
いきなり唯が、ベッドの上で泣きながら誠に抱きついてきた。
「あ、ちょっと、唯ちゃん……」
誠はどぎまぎする。
それでも思わず、胸の中の唯の背に、腕を通していた。
今まで、何度も感じられた暖かさ。
唯の頬を伝わる涙が、誠のスーツをぬらす。
それでも、こんなヘタレな自分を愛してくれて、嬉しかった。
自分が、言葉だけでなくこの子を愛したことも、間違っていなかったような気がした。
同時に、胃が重苦しくなってくる。
これから自分も辛いこと、でも言わなければいけないことを言う必要があるのだから。
その中で、憂の暗い表情と視線がジンジン感じられたのが気になったが。
ムギは2人と憂を、興味深げにかわるがわる見た後、
「じゃあ私、沢越止を連行しますので」
休憩所からムギは、止とSPたちと一緒に去って行った。
唯を誠と2人きりにした方がいいと思ったからだった。
「あ、もしもし……誰です? ……え、HTTファンクラブに入りたい人がいる?」
小さくムギの声が、聞こえた。
SP達が去ったあとで、唯と誠、そして憂は3人だけになった。
「伊藤君、お姉ちゃん……」
憂の声は低い。表情もどんよりしている。
不気味に、沈黙が流れた……。
「……憂。ちょっと場を離れてくれる? マコちゃんと、2人で話がしたいから……」
唯が誠に抱きついたまま、憂に声をかけた。
「……でも、お姉ちゃん、沢越止に襲われてショックだと思うし……」
憂の表情は、浮かない。
「大丈夫だよ。マコちゃんと2人でいれば、心が落ち着くし」
するとムギが踵を返して戻って来て、ぐっと強く憂の腕をつかむ。
「今は2人きりで、話をさせてあげましょう」
「でも……」
「あとはもう、2人の思いにゆだねるべきよ。大丈夫。伊藤さんは悪い人じゃないし。唯ちゃんも、私達より伊藤さんといた方が落ち着くみたいだし。まかせましょうよ……」
憂は暗い顔でうなずくと、ムギと一緒に休憩所を離れていった。
ガヤガヤと、外は相変わらず話し声が聞こえている。
外側のにぎやかさとは対照的に、体育館では静かな時間が流れていた。
七海一派は、まだ戻らないようだ。
ムギからメールが届き、澪達は、止が逮捕されたことを知った。
ようやく皆、安堵の表情になれた。
「どうする?」
「この場合は、その場を離れた方がいい」刹
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