第3部:学祭2日目
第14話『唯誠(ゆいま)』
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の鳴くような声。
ようやく彼女が、我にかえったようだ。
「桂……今の話、聞いてたか? 伊藤は唯より、貴方のことが好きだって、メールに書いてあったんだ」
澪の話を聞いているのかはわからないが、再び言葉は、自分の携帯に届いた誠のメールを黙読する。
「誠君……。やっぱり、私のことが好きだったんですね……」
言葉は、ギュッと白い携帯を抱きしめた。
澪は、とりあえず安堵の息をつく。
ふと急に、唯の泣き顔が浮かんだ。
「そうだ、唯は!?」
思いついたように澪は、唯に電話をしようと携帯を取り出す。
その一瞬、唯に本当のことを言ったらいいのかどうか、ちょっと迷った。
その時だった。
どさどさと七海一派が入ってきて、
「おまえら、悪いけどここから出すわけにはいかないなあ」
8人ほどやってきて、周りを取り囲んでしまう。
遅れて律と刹那が、追うようにしてやってくる。
七海配下の合間から、律と刹那はちらちらと2人を見ている。
「あ……貴方達……!」
呆れと混乱のこもった声を出す澪に対し、
「すまねえ澪!! 止められなかった!!」
「学級委員の私と部外者の田井中さんの力じゃ、止められるのはここまでみたい……」
謝る律と、愚痴をこぼす刹那。
「さて、ヤキいれてやりますか」
血走った目で迫るリーダーに、澪は後ずさりして、思わず尻もちをついてしまう。
その時であった。
「待って!!」
甲高い大声が、体育館の中に響く。
入口の方からだ。
そちらを向くと、世界が真顔で、戸をつかみつつ立っていた。
「みんな! もういい!! やめてくれる!?」
世界は、律と刹那を通り過ぎ、七海配下に向かって仁王立ちになった。
「あれ」榊野の女子生徒は口々に「君、1年3組の西園寺だよね。七海が言ってた」
「私のこと、知ってるんだ……」世界は戸惑いながらも、「まあとにかく、もうこれ以上、桂さんに手を出さないで! 桂さんは私の友人だから……」
「ほう……」
横で律は、感心のため息を上げた。
「は? 七海さんの話では、桂は貴方と彼氏を争ってるって聞いていたけど」
「あ、それはちょっと前……。でも、今は桂さんに譲ることにしたの。七海は私のためにこんなことをやってるんでしょ? 私の頼みの方が七海の頼みより優先。ね、頼むから」
柏手を打って、世界は懇願した。
「世界……」
「ほう……」
刹那は面食らった表情で、律はそう来たかという顔立ちで、その様子を見ていた。
言葉を襲おうとした生徒達は、また皆で相談を始めた。
「どうする?」
「かといって、七海さまに相談なしでは……」
「あ、でも、一連の首謀者は西園寺さんだって聞いたし。甘露寺さんは西園寺さんの意向を受けて…」
「一応謝って、手
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