暁 〜小説投稿サイト〜
Cross Ballade
第3部:学祭2日目
第14話『唯誠(ゆいま)』
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も思った。
 が、今はそれどころじゃない。
 言葉のポケットを探ると、純白の携帯がある。
 伊藤から連絡はないものかと思って、思わず取り出した。
 カラーン。
「!」
 すると、一緒に手製のブローチと指輪が床に落ちる。
「これ……ひょっとして、伊藤が渡した……」
 見る限り、七宝焼きで作った代物だが、非常に光り輝いて、形も整っている。
 おそらく、最上級のものを彼女に渡したんだろう。
「伊藤……きっと、桂が本命なんだよな……。そうでないとな……。ははは……」
 思わず澪は呟き、ついでに携帯を見てみる。
 幸い、留守番着信と新着メールが届いていた。
 誠のだ。
 思わずメールを開いてしまう。
 それを見て……安堵の表情になる。
 それから言葉の耳元に、囁くように言う。
「桂! 伊藤からメールが来てる。見てごらん。」
 澪は言葉の耳元で、囁くように手紙の内容を読んだ。

「『言葉へ

まず最初に、ごめんなさい。
ずいぶん迷惑をかけてしまった。
本当は俺、言葉のことが好きなんだ。
つい世界や唯ちゃんに迷ったりしたけれど……。
考えてみれば、最初につき合ってたのはお前だったね。
その責任をきちんと取らなければいけなかった。
言葉は、俺が隠れて世界と付き合ってた時でも、唯ちゃんとキスした時でも、変わらずに俺のことだけをずっと見てきたんだよね。
愛想を尽かさず、いたるがピンチの時でも助けてくれていたよね。
俺、すっかり忘れていた。
お前にここまで思われていることに。
本当にすまなかった。

でも今、親父は唯ちゃんを狙っている。
唯ちゃんのことが一番好きというわけじゃないけれど、親父が絡んでいる以上、ほおっておけないんだ。
だから、今は言葉と付き合えない。
許してくれ。

もし言葉が俺のことを好きならば、全てが終わってひと段落したら、俺と付き合いなおしてほしい。
でも、もし言葉が、唯ちゃんを気にしている俺が嫌だったり、俺に愛想を尽かしているなら、無理をすることはない。
俺とは別れてかまわないよ』」

 見やすいようにデコメがいたる所にちりばめられた、派手なデザインである。
「な……。伊藤が一番好きなのは、唯ではなくて貴方なんだよ」澪は続ける。「ほら、わかるだろ。伊藤は貴方のことが好きなんだよ。唯よりも好きなんだ。
ここで頑張れば、桂、伊藤の彼女になれるんだぜ。
だから、戻ってきてくれよ! な……!」
 抱きしめたまま、背をぽんぽんと叩いて、澪は震える声で言った。
 そして、ぎゅっと腕を締めつける。
 くっつき魔の唯を笑えないな、と一瞬思った。

 そのまま、一刻経つ。
 ふと、言葉の体が、急に暖かくなったように思えた。
「秋山……さん……秋山さん……?」
言葉の、蚊
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