第3部:学祭2日目
第14話『唯誠(ゆいま)』
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重役にまで手を出して。
幸い、父がじかに警察庁に出向いたら、すぐ逮捕状を出してくれましたよ」
ムギは無表情だが、声に憤りがこもっているのを、周りはすぐにとる。
「まさかそんなコネがあるなんて、思ってもみなかったけどよ」
止は脱力して、手錠がかけられた腕を下ろす。
誠の怒りが冷め、右足の痛みが急にひどくなり、立っていられず、誠はベッドの上に腰かけた。
ちょうど唯の隣。彼女が寄ってきている。
気になって見ると、唯は悲しさと安堵が入り混じったような顔をしている。
服も乱れたままだ。
そばに、無理やり脱がされた紺色の上着が、ひしゃげている。
校庭。
律・刹那と七海一派がぎゃあぎゃあ争っていたころ、世界は一人、自分のしたことに関して考えていた。
元々は自分から桂さんに近づき、誠と親しくなりたいという思いで誠を紹介した。
それがちょっとした偶然から、彼と関係を持ち、本当の気持ちを押さえられなくなってしまった。
ちょっとしたボタンの掛け違いではあったんだけど、それで桂さんに誠を譲れなくなってしまって……。
でも、全てのほとぼりが冷めた今、思う。
それでよかったのだろうか。
あの時、桂さんとけんかした時も、自分は感情的で理不尽なことを言っていた。
誠を譲りたくなくて。
でも、誠自身は……。
自分が彼を独占しようとすると、怒ってしまった。
そこまで考えた後、もう一度、校庭のほうを見た。
そこでは、田井中さんと自分の親友が、七海の配下の人間を止めようと話しこんでいるようだ。
田井中さんは自分をかばってくれたけど、同時に桂さんのことも助けようと思っている。
自分は……。
誠が平沢さんとキスしたことに、つい怒って彼に手をあげてしまった。
でも結局、平沢さんにかなわないと思い、彼女に譲ることにした。
とどのつまり、結局桂さんには冷たくしたまま。
でもそれで、よいのだろうか。
…………
律と刹那が皆を止めている間。
壊れた言葉を何とかしようと、澪は彼女を強く抱きしめたまま、心のうちで頭を抱えていた。
するとメールが届く。
ムギからだった。
「唯がいなくなった……? よりにもよってこんなときに……!!」
思わずがたがた震えてしまう。
でも…………。
中途半端なところで、作業を中断していいのだろうか。
言葉だって壊れていると言うのに。
どうにかしなければ。
外でガヤガヤと声が聞こえる。
七海の配下が、何やら自分達のことでさわいでいるようだ。
「頼む、律……! ムギも梓もなんとか唯を見つけてくれよぉ……」
呟く澪。
切羽詰まった挙句、やぶれかぶれになり、言葉のポケットを見る。
人のを勝手にみるのは常識外れと
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