第3部:学祭2日目
第14話『唯誠(ゆいま)』
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、ずっと隠れて皆と付き合ってた。
世界も言葉も、そして唯ちゃんも好きだったから。
あいまいな態度のまま、みんな失いたくなくて、みんなと付き合っていた」
その途端、誠の気持ちは重くなった。
自分のはっきりしない態度で、どれだけ世界や言葉や唯を傷つけてきたか、胸がキュッと鳴る思いがした。
「だったら!」
せせら笑う止を彼は制し、
「今までの俺が、弱くてふらふらしていたから。
みんな好きだったから、流されるままにこの関係を続けていた。
でも……もうこれ以上、このままではいられないって、いつも思ってたんだ!!
あんたと俺は違うから!!」
「なら、自分の好きな人を言ってみなよ、今ここでさ!!」
止は片方の眉をあげて、彼をなじる。
「!!」
誠は再び、胸をつかれた。
いつも悩んでいた答え。
今まで、いくら悩んでも出せなかった答え。
「俺が本当に好きなのは……」
だが……。
なぜか今は、その答えが単純な気がしていた。
しかも、答えは1つしか、思い浮かばなかった。
「……言葉だよっ!!」
止も、唯も、ムギも、一瞬、あっけにとられた……。
沈黙が、しばらく流れた。
「あ、言っちゃった……」
誠は、自分で自分に驚いていた。
今までずっと、答えられない質問だったのに。
わからない。
なぜこんなに分かりやすく。かつ自分の気持ちが透明に見えたのか。
大嫌いな父親の前だから、出てしまったのだろうか。
「……ふん、ならば俺が唯に手を出すのを、あんだけムキになって止めることはなかったんじゃないのか。」
止は毒づく。
「あんたは……したいだけだろ……。今までも母さんをほおっておいて、沢山の女の人に手を出して、子を作らせて……!!
あんたなんかに、唯ちゃんを汚させはしたくなかった……!!」
目をそらさず、誠は止の目を睨んだ。
「……自分のあいまいな態度で世界や唯ちゃん、もちろん言葉だって傷つけたのは申し訳ないと思ってる」誠は続ける。「でもそれは、みんな好きだったからなんだ。
それでどちらとも選べなくなって、ずるずるずるずる今まで関係を続けてきたんだけど。
それではいけないとわかっていながら。
唯ちゃん、ほんと、謝る」
誠は震えている唯に向って、頭を下げた。
唯は、聞いているのかいないのか、潤んだ目で彼をちらりと見た。
SPが出てきて、
「伊藤さん、もういいでしょう」
そっと肩をたたく。
ごつい体格の割に、口調は礼儀正しい。
誠の手をどけ、顔を上げた止の手に手錠をかけた。
続いてムギがやってきて、逮捕状を見せながら、
「貴方を、警察に連行します」
「……まさか、逮捕されるとはな。俺にはコネがあるんだがね」
「そうはいきません。私の会社の
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