第3部:学祭2日目
第14話『唯誠(ゆいま)』
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そちらを向いた止の頬を、誠は思いっきり殴っていた。
それでも怒りの思いと、息苦しさがおさまらなかった。
止はベッドからはじき出されて倒れ、薄暗い床を転がる。
そのポケットから、黒いリモコンのような装置が落ちた。
スタンガンだ。
おそらくこれで、SPや唯を怯ませていたんだろう。
「これは、スタンガン。貴方…!」
後からやってきたムギがそれを拾い上げ、怒りの目で止を見る。
続いて来たSP2人が、気を失っている憂と、ベッドの唯を保護する。
そのどたどたした音で、憂は目を覚ました。
誠の視界に、Yシャツ姿の唯が一瞬、見えた。
白いベッドで横になったまま、体を押さえて震えている。
それを見てさらに誠の怒りが、胃から頭へと這い上がり、倒れている止の胸ぐらをつかみ、拳を振り上げた。
「…お前か…」
止は不敵な笑みを浮かべ、ため息をつく。
「親父…!!」誠は奥歯をくいしばり、その間から「よくも唯ちゃんを…!
そして、俺を殺そうとしやがったな…!! 人でなしが……!!!」
ヒューッ、ヒューッと息をしながら、喘ぐように言う。
上着を脱がされ、Yシャツの第1、第2ボタンが外されている唯は、横にうずくまったまま体を押さえて震えている。
「いつもそうやって、母さん以外の女に手を出しやがって! 床上手かどうか知らないけど、母さんをどれだけ傷つけたか、分かってるのか!? そして、唯ちゃんにまで……!!!」
「何を言っている! お前も同じだろ!!」
ハッと彼は胸をつかれ、それを振り切ろうとして止の顔面を殴る。
それでも、ナメクジのようにずるずると止の声が頭に残る。
「あんたと俺は違う!!」
休憩室に、誠の怒鳴り声が響き渡った。
止は頬を押さえながら、
「同じだよ。萌子から聞いたぞ。
桂言葉と付き合っていながら、西園寺世界とも関係をもったんだってな。
そして今は、この子に対して躍起になっている」
再び胸をつかれる誠。
世界、言葉、そして唯の顔がかわるがわる浮かぶ。
「伊藤さん、この人の言うことに耳を傾ける必要はありません。
気にしなくていいんです! 貴方は沢越止とは違います!!」
ムギの言葉も、全く耳に入らなかった。
「所詮俺の血かねえ。」
「……!!」
バキッ!!
また誠は、我を忘れた。
勝ち誇る止に対し、横っ面に拳をぶつけた。
「な……殴る必要、ないじゃないですか。現に伊藤さん、唯ちゃん気遣ってくれてるし・・・。認めなくていいんですよ」
さらに焦りながら、ムギはフォローを入れてくる。
が、誠は拳を下ろして、深呼吸をする。
そして筋が弛緩したかのように腕を垂らして、気持ちを落ち着けると、しっかり、そしてきっぱりと答えた。
「認める。確かに俺は
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