第3部:学祭2日目
第14話『唯誠(ゆいま)』
[3/17]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
七海が彼の腕をつかむ。
「悪い、いまそれどころじゃねえんだ!」
「大事な話だっ!!」声を張り上げて七海は怒鳴った。「世界はどうした? あんた、世界の彼氏じゃなかったのかよ!!」
「は……?」
誠は思わず、足を止めてしまう。
「世界自身は、平沢さんにあんたを譲るって言ってたけど……。
あんた、世界に何かしなかったのか!? それで世界が弱気になったんじゃねえのか!?」
「違うよ!! ただ……」今は固まった世界への思いを、彼は七海に対して、打ち明けていた。「世界とは……所詮、友達でしかなかったんだ……。
今まで付き合ってたけど、やっぱり喧嘩することが多くて、心の底から好きになれなかった。
好きだけど、好きじゃないんだ」
「……本当かい……」
七海の真剣な声に、彼は多少、後ろめたい気持ちになりながら、彼女の手をほどいた。
「……ああ……」
それを聞いて、半分呆れ気味の表情で、七海は目をつむる。
「伊藤さん、早くしてください!! SPの人たちも、3年2組の休憩室をなんとしても探して!!」
今度はムギが、誠に対して声を上げる。トランシーバーを取り出してSPに連絡しつつ。
急いでムギの後を、誠は追った。
走ろうとするが、一歩一歩進むたびに右足が痛み出し、思い通りに進めない。
「ムギさん、甘露寺と何かあったんですよね? 世界がムギさんのことを気にしてましたし」
「あ……気にしないでください。こちらの問題なんで」
声をかけるが、はぐらかされてしまう。
「伊藤の奴……」
後に残った七海は、世界を案じつつ、呟いた。
集まった野次馬も、蜘蛛の子を散らすように去って行った。
ブシュウウウウウッ!!
校庭で騒がしく人々の話が聞こえるなか、コーラの噴く音が空気をつんざく。
「ほれ、見事な暴発だろ」
500mlのペットボトルから、噴水のごとく勢いよく噴き出るコーラを見て、律はやったとばかりに胸を張る。
「……まあ、昔聞いたことがあります。メントスをコーラに入れると暴発するって」
他の女子生徒達も、唖然としながら律の相手をしている。
周りはけげんな顔をしながら、横を通り過ぎていく。
「って、んなことしている暇ないだろ!!」
リーダーと思しき人が、あわてて声をかけてくる。
「待て待て、まだまだ隠し芸はあるんだぜ。ほら、マギー審司よろしくビッグイアもあるしー、それから……」
「さっきから私達の邪魔ばかりしているけど、もしかして貴方も、桂や秋山さんの味方なんですか!?」
ぐいっとリーダーが進み出て、血走った目で律を睨む。
律は苦笑いしながら、
「いやあね、友達っていうか、腐れ縁っていうかね…ほっとけない仲というかね、あははは…」
「まさか、あなたも邪魔をするっていうのなら…どうなる
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ