第3部:学祭2日目
第14話『唯誠(ゆいま)』
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でいい笑顔を見せていた。独りでも君はいい笑顔ができる。
そんな唯ちゃんに、俺はふさわしくないと思うんだ。
だから、友達に戻ろう」
「そんな……」
唯は思わず、目を伏せた。
「それに言葉は、俺が世界と付き合っていても、唯ちゃんとキスした時も、変わらずに俺のことを見てくれていた。
見捨てずに、憂さんがいたるを襲ったときだって、俺を助けてくれた。
俺はずっと、自分に向けられた愛情に気づかなかったんだ」
「……私だって……」
「唯ちゃんのことは好きだから。大事には思ってるから。友達として、これからも接したいって思う……」
言いかけて、誠は言葉を失った。
唯の目には涙がにじみ、額には血管が浮かんでいる。
彼女は、耐えられなかった。
「ずるいよ……マコちゃんは……!」
「ずるいって……」
「私をその気にさせて、今更別れようなんて……!」
今度は誠が目を伏せ、
「はっきりしない態度だったのは、本当にすまなかった……って」言い終らないうちに唯の両手が、誠の両肩をつかんでいた。「ちょっと何するんだよ。……痛い! 右足くじいてるんだぞ。」
「このまま黙って去れないよ!! マコちゃん!」
片手を外し、唯はスカートのポケットから、あらかじめくすねていた、あれをだした。
「!!」
「……これ、使って……!!」
誠は、愕然となる。
避妊器具だ。
どこから取ってきたのか、分からないが。
……そうか、ひょっとして、言葉を助けようとして休憩室に行ったときに……!
そう思うと、急に胸が高鳴り、体が火照り始めていた。
唯もそれに感づいたのか、誠の肩にぐっと力を入れる。
思わず彼女は、バランスを崩してしまった。
「きゃあ!」
「うあ!」
何かにつまずき、平沢唯と伊藤誠は重なって倒れ込む。
誠は強く背を打った気がするが、クッションみたいなものがあって痛くはない。
「つーっ……え……?」
気がつくと誠は、白いベッド(本来は保健室にあるもの)の上で、唯に肩を掴まれ、組み敷かれている。
薄暗い部屋。そこに男女が2人きり。
唯は誠の胸のあたりで、顔を預けた。
そう言えば、始めてキスした時も、彼女は体をそうやっていたな。
妙なデジャビュに駆られそうな思いを、必死にふっ切ろうとする。
「おい、やべえよ」
肩をふりほどこうと思って、誠は急にゾクリとした。
見交わした唯の顔は紅潮し、目は潤んでいる。
大きな胸元が、目をそらそうとしても視界に入ってくる。
何を求めているかはすぐに分かった。
雰囲気に流されそうな自分を、誠は必死に押さえ付けた。
彼女の目は真剣なようだ。
もう望みはかなわないと、分かっているはずなのに……。
「や、やめようよ……」
「一回だけでい
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