第3部:学祭2日目
第14話『唯誠(ゆいま)』
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向かっていた。
「澪先輩!」
横から梓が、憂を連れて追い付いた。
「梓、どうしたんだ!?」
「どうって、あの2人を止めに行くんですよ!!」
「……私は、お姉ちゃんの気持ちを尊重したいけどなあ……」
呟く憂に、
「おいおい、憂はあんな奴に唯先輩を取られちゃっていいの!?」
「いやだけど、でもね……」憂は窓を見ながら、「お姉ちゃんと伊藤君が2人でいた時、2人ともすごく楽しそうだったんだよ。
2人で一緒に料理をしていた時、2人ともうれしそうだった。
そして、2人とも自分に正直になってた」
「……」
「邪魔するのは悪いなあ、と思う……。
私はちょっと、学園祭を楽しんでくるから。3人で行ってきて……」
踵を返して、いかにも鬱といった感じで憂は去って行った。
「……!!」梓は呆れながら、「もう憂なんか知らない! ……伊藤め、私の唯先輩に手を出したら……!」
といいつつ、澪と言葉を追うような形で走り続けた。
前を走る2人は、こんな会話をしている。
「……何でこんなに皆さん、平沢さんを気にするんですかね? 桜ケ丘生徒って、レズが多いんですかね……」
「いや違うって……」
呟く言葉に、澪は苦笑いしながら答えた。
「みんな唯が心配なのさ。私だって、唯が沢越止に襲われたのか不安だったし。でも唯が伊藤の気持ちを無視して、手を出しちゃったら困ると思うよ」
「誠君は、私が好きですからね……平沢さんが手を出しては困ります」
その場で澪は、上手く皆の気持ちをまとめ上げるが、言葉は思わず毒づいてしまう。
3人は、目的地へと急いで行った。
「唯……」
「誠君……」
初めての沈黙の長い会話を、唯と誠は続けていた。
「唯ちゃん……」
「言ったじゃん、昨日。『俺も、本当は』って。
私のこと、好きなんでしょ」
そうだった。
あの時、悲しい顔をした唯を見ていられず、つい引きとめた。
言葉も好きであり、唯も好きだった。
どっちも好きで、どちらもそばにいてほしかったんだ。
「そうだよ。言葉も好きなら、唯ちゃんも好きなんだ……」
「だったら!」
「でも……」
誠は、今まで自分で気づかなかった自分の思いを整理し始めた。
「唯ちゃんも好きだったんだよ。きれいな目で、いい笑顔だからさ。
その笑顔は、俺を純粋にさせる力があるんだと思う。いや、あったよ。
でも……このまま俺と付き合ってたら、大好きな唯ちゃんが壊れそうな気がしてさ……。
それなら、友達のままでいようって思ったんだ。」
「そんなことない!! マコちゃんに出会ってなかったら、今の私はないと思う。
マコちゃんの前だから、いい笑顔だって出来たんだよ!!」
「ううん」誠は首を振って、「俺なんかがいなくても、例えば学祭で演奏した時も、みんなの前
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