第3部:学祭2日目
第14話『唯誠(ゆいま)』
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なくたっていいだろう」言いかけた七海を、律は静止する。「ただ縁がなかった、それだけじゃねえのか」
「田井中さん……」
まばたきをしつつ、世界は言う。律は再び笑いながら、
「縁があるか、ないか。結局はこれに尽きるだろ。
西園寺だって伊藤でなくとも、いずれ縁のある男を見つけると思うぜ。
さて、行くか」
「どこへ?」
「ナンパ。私も見つけたいしよ、いけてる彼氏」
「待って!」世界が止める。「平沢さんはいいの?」
「いやあ、もう疲れちまってな。それに、あいつを選ぶかどうかは伊藤が決めることだぜ。私たちが口出しできることじゃねえよ。止も逮捕されたみてえだし、もう厄介なことにはならないと思うぜ。
あいつら、さんざん私らを振り回したんだから、せめて最後ぐらい、自分でけじめをつけさせねえと。
それと、いい男がいたら紹介してくれ。じゃ、後で」
律は手を振り、遠ざかっていった。
携帯からメールが来たので、とってみる。
「やれやれ、澪の奴……。どこまでおせっかいなんだか」
「律先輩!」
突然声をかけられる。
梓がそこにいた。
「おお、梓か。大丈夫、沢越止は逮捕されたそうだぜ。唯が襲われる心配はねえよ」
「ムギ先輩から聞いています……。じゃないです、唯先輩と伊藤はどこに行ったんですか!?」
「ああ、ムギによれば、2人きりで3年2組にいるみたいだぜ」
「な!? 2人きりにさせたんですか!? まずいじゃないですか……」
「追いかけるのか!?」
「律先輩だって、言ってたじゃないですか! 2人にとっては一種の縁だって」
「そんなこと言ったかな……?」すっかり忘れていた言葉を、律は思い出し、「ああ、それは澪と桂の話だったんだけどさ。
桂は悪い噂が絶えねえし、多分孤立無援じゃないかと思ってさ。澪のような味方がいたほうがいいと思ったんだけど……唯と伊藤もそうか」
「自分で言ったんじゃないですか……」梓は半ば呆れ気味に、「私は、唯先輩があんな奴と付き合うなんて、まだ許してませんからね!」
「分かった。それだけ思うのならば、止めに入ってもいいぜ。私は止がいなくなった以上、唯と伊藤の2人の思いにゆだねるけどな」
「……わかりました。ありがとうございます」
深々と頭を下げると、梓は突っ走ろうとした。
「梓ちゃん!!」
横から、通りかかった憂に声をかけられた。
「憂……」
「私も最初は、あの2人を引き離したいと思ってたんだけど……。
やっぱり、ムギさんの言う通り、ここは2人の気持ちにゆだねるべきだと思う」
「何言ってんの!? あんな奴に唯先輩を取られちゃっていいの!?」
「でも、お姉ちゃんは伊藤君が好きだから……。伊藤君は分からないけれど……」
「私は、あんな奴に唯先輩を取られたくはないな。それにこれ以上、唯先輩と
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