第3部:学祭2日目
第14話『唯誠(ゆいま)』
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と言葉と異なり、律と世界・刹那の足取りは、後を追ってはいるものの、ゆっくりしている。
そのまま、校内の玄関に入った。
「急がねえのか?」
「いや、もうこうなったからには、もういいでしょう。私はもう、当事者じゃないんだし」
心配する律に対し、世界は大きく息をして答えた。
「それにしてもよう、まさか西園寺が、桂へのいじめを止めるとはな……」
ニヤッと笑って語る律に対し、世界は目を伏せている。
「さっきも言ったけど、誠の彼女になれない以上、私が桂さんを遠ざける理由はありませんから……。
ちょっと気まぐれに、『いい人』になってみただけです」
「いーじゃんかよ、伊藤もみんなも好感を持つと思うぜ、あんたに」
「でも……桂さんは女子からは嫌われてますし。それに、七海には悪いな、と思う」
「あいつね……」にこやかな顔を消して、律はため息をついた。「今度あんた達も呼んで、桜ケ丘でティータイムを開こうとも思ったんだけど、どうしようかな……」
「いえ、余計な気を使わなくても……。七海のこともありますし……」
「なーんか言ったか、世界?」
きびきびした声。
噂をすれば影、七海であった。彼氏と思しき長身の男性と、腕を組んでいる。
「七海……」
「宮沢から話は聞いているさ。桂への攻撃をやめてくれと、あんたが言ったって」
「……」
世界は少し、むっとなった。
「それでいいのかよ?」
「……もういいの……」彼女はうつむき加減に、小声で言う。「誠とは、うまくいかなかったし……それに、平沢さんを見てたら、この人にはかなわないな、って思っちゃって。
平沢さんと付き合ってる時の誠……平沢さんと一緒にいた時の誠、嬉しそうだったなあ……」
「そんな自信なさげで、どうすんだよ!?」
「いーんじゃねーの?」律が口を挟んできた。「うまくいかなかったって、西園寺自身が言うんだからさ」
「まったく、桂の奴に何言われたんだか……」
「だから、違うって言ってるだろ!!」律の声が、急に荒くなった。「いつもそうやって、全部桂のせいにして、ムギまで巻き込んで陥れて!!
ムギは本当にあんたにあこがれてたんだぞ!! それを粉々にぶっ壊しやがって!
もういいだろ!! 終わりにしてくれよ……」
「部外者の貴方に何がわかるんですか!?」
「違う!!」大声で遮ったのは、世界だ。「……たぶん本当は誠、私のこと、好きじゃなかったんだよ。
好きだったのは、そしてつながってたのは、ただ体だけだったって、思うんだ。
平沢さんが誠と付き合ってると思いこんで、怒って、桂さんにも八つ当たりして……。こんな心の狭い女、いないよね……」
好きだけど好きじゃない。誠がそう言っていたことを七海は思い出して、
「そんなことないって、伊藤や桂が……」
「そこまで自分を卑下し
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