第3部:学祭2日目
第14話『唯誠(ゆいま)』
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那は落ち着いた口調だ。「宮沢達がまた戻ってきて、襲ってくるかもしれないから」
学級委員の彼女の言うことに、従ったほうがいいだろう。
皆、体育館を出て外に出る。
日は中天を通り越して、傾いていた。腕時計を調べると、午後2時。
生徒達の数も、やや少なくなってきている。
「いまさら、気づくのが遅いのかもしれないんですけど……」言葉は、陽だまりのような明るい表情になっていた。「誠君がいなくても、私は一人じゃないんですね……。秋山さんがいますし、考えてみれば、ずっと心も気を使ってくれていたし」
「はは、そうだね」澪は思わず、笑った。「心ちゃんや私だけじゃないと思うな。桂を育ててくれたお父さん、お母さん。それに律や西園寺や清浦だって…桂のことを案じたから、わざわざあの人達を止めてくれたんだと思う。
貴方の、笑顔が見たいから。
貴方が苦しんでいるのが、耐えられないから。」
「オイオイ、なんでそうなっちゃうの?」律が赤い顔で、横から口を出す。「私は澪が危険に会うのはまずいと思ったからだよ。でもまあ、思いっきり感謝しなさい」
「私も、こういうやり方が好きではないから止めただけ」
2人を見て、澪はくっくっと笑う。
世界だけが、黙っていた。
それに目もくれず、言葉は、
「ありがとうございます。もし…もし万が一誠君に振られても、私、もうくじけません。泣きませんから。
だって、秋山さんや、みんながいるって、分かりましたから…」
「いやいや、伊藤は貴方のことが好きって言ってるんだよ…そうだ、唯と伊藤は?」
思案していると、メールが来る。
ムギからだ。
しかし澪は、そのメールを見た時、表情が変わる。
「え…? 2人とも、3階3年2組の休憩所にいる…。2人きりにした? お互いの思いを確認しあうには、それしかない?」
ムギからのメッセージに驚く。
「誠君…!」
言葉は、校舎に向かって駆け出していた。思わず澪も、後から追う。
「桂、伊藤は本当に桂を思っているから、多分伊藤は唯を拒むと思うんだが…」
「そんなことないです。誠君は、優しすぎますから……きっと、平沢さんを拒まないと思うんです。」
「そんなの……」
「たぶん、平沢さんと……!」
「くっ!!」
言い終らないうちに、澪は、かけ足を速めてしまっていた。
昇降口から、あっという間に階段を上っていく。
言葉は、留守番着信を開く。
『もしもし、言葉、どこだ? 誠だ。今そっちに向かってるから、返事してくれ』
「それは?」
「誠君からの着信。誠君、私のこと……。私も、誠君の思いに気付かなかったから……」
「そういうわけでは、ないと思うけど……」
苦笑いする澪だが、すぐに気を取り直して、3階の休憩室に向かった。
かけ足を速めた澪
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