第3部:学祭2日目
第14話『唯誠(ゆいま)』
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当たり、あります?」
「考えられるのは、休憩室ですね。とは言ってもたくさんあるし、どこにいるのやら。
利用されやすいところだから、部屋の全てをSPが2人1組で監視して、大丈夫だとは思うんですけれど……」
「そうですか。見落としがなければいいのですが……」
「あ、動かないで」
ムギは誠の靴と靴下を脱がせ、赤く腫れた右足首に湿布を貼ってやる。
ひんやりした感触とともに、痛みが薄れていった。
「……とりあえず、これでなんとか歩けそうです。フォークダンスは無理だろうけど。ありがとう」
「いえいえ、当然のことです」
物腰の柔らかいムギの横で、再び彼は立ち上がった。
出発しようとすると、
「あれ、伊藤じゃねえか。それにムギさんも」
急に声がする。
2人ともそちらを向くと、野次馬の中で七海が、長身の彼氏の腕を組んで立っている。
「甘露寺さん……。そちらは彼氏ですか……?」
「ま、まあね……。昨日はデートしそびれちゃったんで、今度こそと思ったんだけど……」
笑う七海に、ムギは肩を震わせ、
「なんで……なんで私や貴方を慕う皆さんにあんなことをさせて、自分はのうのうとデートなんかしてるんですか……!?」
潤んだ声で空笑いしながら、自分より背の高い七海に詰め寄った。
彼女はバツが悪そうに、
「ああ、そこは、まあ、悪かったと思ってますから……。一段落したら、ラーメンでも何でもおごってあげますから……はは……」
「おごれば済むという問題じゃありません!」ムギの目には、涙が光っている。「私……本当にあなたにあこがれていたのに……どうしてこんなことをするんですか!!」
「ああ、ああ……」
七海は何も言えなくなる。
この2人に何があったのか、誠は全然わからなかったが、
「とりあえず」誠が慌てる七海に、「桜ケ丘の平沢唯ちゃんがどこにいるか、甘露寺、知ってるか? ……わけないよな。」
「平沢さんだよね。そういえば見たな」
「何だって!?」
「3階の廊下に出ていたのを見かけたよ。あんたを探していたようだった」
「そうだ! 甘露寺さん、彼氏といるってことは……!」ムギは再び七海の肩をつかみ、「一体どこで休憩を取っていたんですか!?」
「え、あー……」彼女は頬を染めて、恥ずかしげに「3年2組の休憩室……」
「! たしか……!!」
ムギはぱらぱらとSPの資料をめくる。
休憩所のある場所について調べているのだが、3年2組の休憩室だけが載っていない。
おそらく見落としがあったんだろう。
「しまった……!! SPが多分、見落としたんだわ……!!」
「じゃあもしかして、そこに親父と唯ちゃんが……!!」
「急ぎましょう」
ムギと誠は、野次馬をかき分けて走り出そうとする。
「待て伊藤!」
その時、
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