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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百四話 最高のカード
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のマスコミ関係者が映っています。そしてトリューニヒト国防委員長がプレスルームに入ってきました。その後ろをビュコック提督、ボロディン提督が続きます。フラッシュが凄いです。
「こりゃあれかな、どちらかが総司令官でもう片方が副司令官かな」
マスカーニ少将が小首を傾げています。彼方此方から“うーん”という声が聞こえました。

『国防委員会から発表します。一昨日、シトレ元帥が暴漢に襲われ負傷した事で貴族連合軍の迎撃を誰が指揮するのかが問題になっていました。同盟市民にも大変大きな不安を抱かせたと思う。ここで改めて同盟軍の体制を発表させていただく』
トリューニヒト国防委員長が言葉を切り周囲を見廻しました。しーんとしています。皆固唾をのんで後任の総司令官の名前が告げられるのを待っています。

『総司令官はシドニー・シトレ元帥』
ざわめきがスクリーンから聞こえてきました。艦橋でも彼方此方で声がします。
「重傷じゃなかったんですね」
「みたいだな」
ラップ少佐とデッシュ大佐が話すと皆が頷きました。表情が明るいです、安心したのでしょう。何と言ってもシトレ元帥は“将の将たる器”と言われているんですから。

『しかしシトレ元帥は療養中のためエーリッヒ・ヴァレンシュタイン中将が総司令官代理として全軍の指揮を執る』
えっ、と思いました。スクリーンからもざわめきが聞こえます。皆が顔を見合わせそれからヴァレンシュタイン提督に視線を向けました。提督は無言でスクリーンを見ています。表情に変化は有りません。

『しかしヴァレンシュタイン中将は階級が……、それに亡命者です。軍の秩序が乱れるのではありませんか?』
質問が上がりました。うん、私もそう思うっていうか皆頷いています。軍は階級社会です、それを乱せば上意下達が崩れてしまいます。滅茶苦茶になるでしょう。

『彼以上の適任者が居ますか?』
『……』
トリューニヒト国防委員長が問い掛けましたが誰も答えません。沈黙しています。周囲を見廻してから国防委員長が言葉を続けました。

『この人事については私、シトレ元帥、ビュコック元帥、ボロディン元帥の四人で話し合って決めました。貴族連合軍は十五万隻を超える大軍です。この一戦に負ける事は出来ません、負ければ同盟の存続にも関わる大事になるでしょう』
「……」

『我々は常識にとらわれず最高のカードを切らなければならないのです。その観点で話し合った結果、ヴァレンシュタイン中将に指揮権を委ねるべきだとなりました』
しーんとしました。スクリーンも艦橋も先程までのざわめきはありません。カタンと音がしました。気が付くと提督が立ち上がっています。

「御存じだったのですな、提督が総司令官代理になると」
「……」
「楽しくなりそうですな、提督」
シェーンコップ准将
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