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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百四話 最高のカード
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チュン参謀長とブレツェリ副参謀長が話しています。私はスクリーンをTV受信に切り替えました。今日午後三時に国防委員会から重大発表が有るから必ずニュースを見るようにと通達が有ったのです。第一特設艦隊の司令部要員は皆旗艦ハトホルの艦橋に集まっています。
「重大発表か、何かな?」
デュドネイ准将が問い掛けるとビューフォート准将が
「多分総司令官人事の発表だと思うが最近は騒々しい事ばかりだからな」
と答えました。司令部要員は皆頷いています。
「ビュコック提督かな? それともボロディン提督か……」
「さあ、甲乙付けがたいな。トリューニヒト国防委員長も頭が痛いだろう」
ウノ少佐とラップ少佐が話しています。何処か面白がっている感じがします。ちょっと不謹慎です。
でも仕方のない事でもあります。シトレ元帥が重傷を負って入院してから次の総司令官は誰なのかというのは軍人、いえ同盟市民の最大の関心事なのです。私の母だって心配しています。賭けの対象にまでなっているのです。本命はビュコック提督、対抗馬はボロディン提督、大穴がグリーンヒル大将。三人とも用兵家としての評価は高いです。誰が総司令官になってもおかしくは有りません。
帝国の貴族連合軍は十五万隻を超えます。同盟軍も第一特設艦隊を含む十三個艦隊を動員して迎撃することになりました。マスコミは史上最大の決戦が迫っていると騒ぎ立てています。その事も総司令官人事に関心が集中する要因の一つです。もっとも貴族連合軍はちょっと可哀想。帝国政府から邪魔者扱いされているという事を私は知っています。
「本当ならヴァレンシュタイン提督が最適任だと小官は思うのですがね」
「まあそうだが、ちょっと難しいだろう」
シェーンコップ准将の発言にチュン参謀長が困ったような声を出しました。チラッ、チラッと提督に視線を向けます。参謀長だけじゃありません、皆がです。
確かにマスコミの中には提督こそが適任だと主張する意見も有ります。ですがその殆どが階級が低いから総司令官は難しい、参謀長にと続きます。実際そうなるかもしれません。その場合第一特設艦隊はどうなるのか、皆が不安に思っています。もっとも肝心の提督は全くの無関心です。指揮官席で黙ってスクリーンに視線を向けています。相変わらずクールです。
それにしてもフォーク中佐がシトレ元帥を襲った事には驚きました。皆が“碌な事をしない”、“あれで士官学校首席?”、“馬鹿じゃないのか?”と言っています。シェーンコップ准将は“イゼルローン要塞で息の根を止めておけば良かったんですよ”とヴァレンシュタイン提督に言っていました。提督の答えは“殺人罪に問われなければやっていました”、です。多分本心でしょう、眼が笑っていませんでした。
スクリーンに国防委員会のプレスルームが映りました。大勢
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