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アイスクリームシンドローム
第一話

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確かに葉月はおかしな奴だった。




高校生になって始めての夏。
毎年飽きもせずに太陽は降り注ぎ、校庭の温度をあげ続けている。
白く、蕩ける様な太陽の熱を一身に浴びながら、私は歩みを続けていた。

「……葉月…ここにいたのね。」

「ん?あぁミオ。よくわかったなぁ?」

ここ、穴場だったんだけど。
ミオに見つかっちゃあまた違うとこ見つけなきゃじゃん。

確かにここは穴場と呼んで差し支えない。
鬱蒼と生い茂る桜は今、若葉の季節だ。
よく目を凝らさなければ、その枝の合間に座り本を読んでいる葉月の姿を見つけるのは難しい。

「三十分は探したわよ。全く…先輩から呼び出されたわよ。
少しは顔出さないと退部にするぞ、って。」

「はっ、あいつらそんなに私がいなきゃダメなのか。
全くもって情けない。」

葉月は軽く鼻で笑った。
私は痛む頭を抑えながら、目の前の少女を羽交い締めにしたい衝動と必死に戦っていた。



楼蘭高等学校。
私たちの通う学校である。
大層な名前だと思うだろう。事実、大層な学校なのである。
大小合わせて五十ゆうに超える部活動、サークルがあり、
中でも最も力が入っているのが運動部だ。
野球、空手、バトン、剣道…そしてサッカー。

私も葉月もサッカー部に所属する高等部二年。
そこそこにレギュラーも回ってきて順調…の、はずなのだが。

どうも目の前のこいつ…もとい稲山葉月に私の幸せは吸い取られている気がするのだ。

さっきも言ったが、私は亞城美緒。
二年の実質キャプテン兼葉月の世話係だ。
世話係、など大仰な呼び名だと思う。
だが、葉月の場合は本当に『世話係』なのだ。

稲山葉月。同学年。
二年の問題児No.1確実なのがこいつだ。
故に二年は結託して世話係なるものを作り出し、それを任命されたのが中学の時からの幼馴染である私だったのだ。
行動をざっとあげると、遅刻サボりは当たり前、先輩への敬意などまるでないし、全身校則無視の超問題児だ。

本当に…こいつと四年も付き合ってきてよく死ななかったものだ。


自分を涙ながらに慰めていると、上から少し高めのソプラノの声が降って来る。


「おい、何をぼけっとしてるのさ。私はサボるから、言っておいてくれ。」


ひらりと手を降り、声を掛ける間も無く木々の隙間に消えていく。



私は本日何回目かになるため息をこぼし、踵を返して歩き出した。
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