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追憶は緋の薫り
悪夢から目覚めれば…
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をして」


「いえ……そんなっ」


 取り繕った良心で引きとめようとするが青野は「じゃあ、また後でな」と、言い残してスタスタと去っていった。

 生徒重視の彼は嫌いではない。

 それまでの過程が骨折り損だが、後は見ての通り操縦しやすい。

 再び一人になり華宵殿に向き直る。

 雨ざらしのそれは寺院にもまた、神社にも思わせた。

 この場所にやって来たのは勿論待ち合わせのためではない。

 あの夢から目覚めても尚、誰かに呼ばれている気がして鳥居の前まで来たがやはり自分以外はいない。

 血色のない頬を緩めて笑った顔が脳裏に過ぎる。

 それを最後に華宵殿に足を運ぶことはなかった。


「…真倖いるかな?」


「……雄黄(ゆうおう)はもういない」


 懐かしむ目と悪戯心がタッグを組んで一歩前に踏み出す彼に、水面に雫が落ちるような静かな声が掛けられたのはその後だった。
身を硬くし、辺りを見回すが誰もいない。


(幻聴……じゃないよな?)


 自慢ではないが、聴力には今まで一度も健康診断で引っかかったことはない。

 目を伏せ次に開いた時にはすべては決まっていた。


「「ずっとお待ちしておりました……主様」」


 ピッタリと揃った二重奏に導かれるまま瞼を開くその先には、雨にも拘らず金銀の派手な髪を垂らして仰々しく跪く二人の青年がどこからともなく現われた後だった。
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