裏の糸は知らぬ間に
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る方が効率が良く、自分の心を砕く事も無く、自分のしたい事を出来るのだと。死者への想いに引きづられる事はもうなくなっただろう。未だに壊れていないのがその証拠。なのに何故か……私のモノにならない。
洛陽での会話では感情を抑え込むことに必死だった。劉備に心酔しているわけでは無いが確実に影響されていたから。自分と似た思考のあの男が劉備を真っ直ぐ信じて従っているその姿が許せなかった。
そこで……先に行き着く展開を思い浮かべて微笑みが漏れた。
――お前が信じる全てを打ち壊してあげる。私に跪き、私の為に尽力する選択肢を示してあげる。その上で、私を認めないというのなら、劉備の方が正しいというのなら乗り越えて、乱世の果てに証明してみせなさい。
矛盾だらけの自分の心はもう一つの感情も見せつける。それが歓喜。自分の力を試すことの出来るモノが成長する様が嬉しくて。こればかりはどうしようもない。
劉備か徐晃、どちらかが私の手を掻い潜って生き残る事が出来るのなら、天下は三つの思想に分かれる事となるだろう。
我が規律と秩序による覇道、孫家による血の絆を元にした旧き王道、大徳による民の為の新しい道筋。
天下三分。間違いなくそれとなる。三つの思想の内の二つは民に何が正しいかをより明確に示す事の出来る生贄となり、たった一つだけが悠久の平穏の為の指標と成り得る。
全てを呑み込んで、私が最後に立ちましょう。
徐晃、お前の向けた刃は封じた。今度は私の刃を受けて貰いましょうか。
私の元に来るのか、敵対者の元にいるのか、どちらでも構わない。どちらでも嬉しいし、どちらでも哀しいのだから。
ただきっと……お前は壊れてでも……矛盾の道を選ぶのでしょうね。
そんなお前に私の全ての力を使わせた事、光栄に思いなさい。
〜誰が夢か〜
空に浮かぶ日輪の輝きは大陸全土を照らし出す。
薄暗い暗がりも何も無くなっていったのだ。
ただ、日輪は休息を望み傾き始める。どうにか落ちないようにと自分は願った。願うだけでは飽き足らなかった。
自分は日輪を支える為に駆けたのだ。遂に辿り着き、両の手で日輪を受け止め、支える事が出来た。
しかし空は蒼天では無くなってしまった。
半分が橙に照らされ、半分は藍色に染まった。
藍色に染まった半分の大地は暗く、悲しかった。
ふいに、真月が藍色の空に上る。その輝きは優しく、暗い大地を青白く照らしてくれた。
日輪と真月が同時に上がり、混ざり合った藍橙の空は美しい。
されどもすぐに消えてしまうひと時の色なのを理解していたから哀しくて、自分はその空が続くようにと想いを馳せた。
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