裏の糸は知らぬ間に
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いわ」
口ではそう言ったのだが私の心は少しだけ違和感を覚えた。
曹操も私もあの男が王の資質を持つ事は気付いているが、何故、こうまで求めてしまうのだろうか。
考えても答えは出ず、そのまま酒を煽って疑問を振り払い、愛しい人とのひと時の酒宴を楽しもうと気持ちを切り替えた。
†
孫策の元から帰ってきた稟に交渉の結果を聞き、その日の会議も仕事も全て終えて、久方ぶりに自室で一人寝をしていた。
夜の闇の中で巡り続ける思考はこれからの乱世の状況を次々に生み出し、消えては現れを繰り返している。
烏丸に動きがあるとの情報が入ったが、それならば公孫賛の負けは確定的。徐晃の望みの一つは潰えてしまった。
私の心には寂寥が圧しかかっていた。
公孫賛という英雄の敗北、私自身が全てを以って彼女と戦えないという寂しさ。無駄な思考というわけでは無いが、私達が攻めれたなら、というもしもの事も考えてみていた。
どのようにして城を落とし、どのようにして追い詰め、逃げ場を無くし、私のモノに出来るか。無事勝利した後に幽州の地は公孫賛に任せ、私の覇業を支える一人にしたかった。彼女の才ならば、臣下を増やせば幽州だけでは無く河北四州をも治めきれただろう。
そうなれば、麗羽に真っ直ぐに意見をぶつけていたように私にも真摯な瞳で、怯えながらも力強い瞳で意見してきたに違いない。
ここで一つの感情に気付く。
ああ、私は麗羽が羨ましいのだ。自分の力を認めさせて、公孫賛とそのような関係になりたかったのだ、と。
それに伴って別の感情が湧いてしまう。二つの感情が綯い交ぜになったそれは私の中で煮え切らない。
孫策には二つの展開を示したが、我が軍が起こす行動でこの後は一つの展開にしかならない。その展開では私の掌の上でしか無く、如何な状況に陥ろうとも望んだモノは手に入る。否、手に入れる。
敵対者の成長に歓喜押し寄せる心とは別に感じていたモノ、洛陽で春蘭が傷ついた時に感じたモノも同じだった。
ずっとずっと昔に、覚悟を呑んだ時点で高みに一人で立つと決めていたのに、いざ、乱世となると溢れてきた気持ち。
孫策にしても、劉備にしても、麗羽と田豊の組み合わせにしても、公孫賛にしても、あの男にしても……私は共に肩を並べて立てる程の英雄を求めてしまっている。
二つの感情は嫉妬と歓喜。
劉備という一人の王に対して私は嫉妬しているのだ。
あの男に大陸を治めきれる器であると認められている事が、私よりもそれをするに相応しいと信じられている事が。
悔しくて堪らないのだ。
私と同じ思想と覚悟を持ち、友であろうと利用して切り捨てて、民の平穏の為のみを考えるあの男が私を認めない事が。
あれは自分で気付いていてもおかしくない。私の元にい
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