裏の糸は知らぬ間に
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をどれだけでも重ねて行く。血の絆、土地の絆、人の絆が我らの力だ。あと……これからの時代でもう奪われないように天下を取るという最終目的も忘れないでくれたらいいわ」
くい、と酒を煽って冥琳は大きな事を語る。本当は……私は孫呉の地があればいい。けれどもそんな甘い希望は乱世では許されはしない。なら全てを我らで包み込めばいい。そうすればもう奪われることも無く、争う必要も無い。もちろん、自分の力も試してみたいし、家族にはいい思いをしてほしいという気持ちもある。
最近気付いた事だが、きっと公孫賛は私達と同じなのだ。ほんの少し甘くて野心が薄いだけ。彼女も自分の地が大好きで、誰よりも家の幸せを願っているのだから。
他人事なのに同情してしまうのは私の甘さ。
「公孫賛は……生き残れるかしら」
思わず零してしまった。彼女が私達と同じ選択が出来るかどうかが気になって。
「雪蓮……軍師として言うならば、五分五分だろう。屈辱の果てに我らと同じ選択をするのか、はたまた誇り高き死を選ぶのか」
負けは確定である事を前提で話す冥琳は私の心を予想してか少し眉を寄せたが、今回は何も言わずに持論を並べて行く。
「ただ、生き残られると後々厄介な事になる。劉備軍の強化は望むことでは無い。黒麒麟がいる限りはな」
お前の言いたかった事が分かったとばかりにあの男の二つ名を強調してきた。やっと冥琳も気付いてくれたようだ。
「あれがいなければ劉備軍は一番利用出来る駒だった。安穏と内への思考だけを続けてくれたなら同盟国として手を取り、国力の底上げを同時に行いつつ邪魔モノを排除出来たはずだ」
なのにあの男がいるだけで外への思考を持ってしまう。袁家転覆の為に手を組めば確実にその借りを利用される事だろう。私達は袁術からの独立を己が自身でしなければ民は納得しない。というより、徐晃と劉備の組み合わせに手伝われては全ての民の支持を持って行かれかねない。
従わざるを得ない状況にされれば、確かに今よりも無茶は押し付けられる事は無いが、それでも窮屈な事に変わりは無いのだ。
「覇業を成し遂げる為にはあの思想が外へ向かうのは邪魔でしょうね。まあ、曹操の条件の二つ目の事態になればこっちが貸しを押し付けられるし、その上であの男を引き込む機会が出来るわね。公孫賛がいようといまいと変わらないわ。確率は低いけど一つ目の事態なら……あの男は捕まえちゃいましょう。殺してもいいけど縛り付ける方が私達の為になるし」
言い切ると、冥琳は小さく喉を鳴らして楽しそうに笑った。何か彼女が楽しくなるような事を言ったのだろうか。
「どうしたの?」
「いや、曹操にしろ、雪蓮にしろ、二人共が一人の男を奪い合おうとしているのが面白くてな」
「優秀な子種は手に入れておいて損はな
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