裏の糸は知らぬ間に
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しても郭嘉は動揺する素振りも見せず、予想の範囲内であったというように小さく頷いた。
「劉表が病床に伏し、娘が代わりに政治を行っているようですが親ほどは上手くいっていないようで臣下の心も離れていきそうだとか。水鏡塾出身の徐庶という新たな軍師を得たらしいのでこれから巻き返せるかに期待、と言った所かと」
自軍と情報が同じである為、信憑性が出た事に安堵する。二つの軍で同じ答えならば正確だろう。
郭嘉は私達の軍が荊州侵攻を強要されるであろうと既に確信しているわけだ。
思春の部下が手に入れてきたもう一つ大きな情報もあるが……ここで開示していいものかどうか。いや、交渉で有利に立つ為には迷わずに開示した方がいい。
「重ねて情報をやろう。劉表の所には呂布が内密に保護されている」
絶句。郭嘉は目を見開き、数瞬だけ思考が中断され、しかしすぐさま知性の籠った瞳で潜っていった。
洛陽の戦後、呂布の消息は斥候の誰もが掴めずにいた。どれだけ探そうとも見つからず、放った斥候のほとんどが帰って来なかったのだ。そんな折、たまたま見つけたのが荊州での陳宮の姿。追っていくと城の中に消えて行った為に間違いなく劉表の元に呂布もいるだろう。
「その上で、だ。我らの軍は郭嘉殿の予測通りに荊州へ侵攻する事になる。袁術は荊州も徐州も弱体化させてから掠め取る事を選んでくるからな」
袁家内部で対立しているとはいえ未だにそれらの情報網は広い。必ず呂布の居所を知っている。先の戦から見ても呂布の被害は火を見るよりも明らかであり、あわよくばこちらの有能な将を減らす算段で間違いない。
「……対策は?」
「詳しくは言えないがある。荊州での戦については放っておいてくれて構わん。徐州の方は……そちらの条件次第と行こう」
言いながら郭嘉に笑いかけると少し微笑み、同じ事を考えているのだと理解出来た。
やはり思考の速さが同じような軍師との会話は楽だな。私の後継者達もこのくらいまで育って欲しいモノだ。
「気付いていましたか。では本題を――」
流れるように話された内容は二つ。どちらも自分の考えていた展開通りであり、渡りに水、と言った所であった。
「分かった。我が主からは交渉の判断を私に一任されている。その条件、受けよう」
「さすがは断金、と言った所でしょうか。ではそのように、これで互いにとって最も有益でしょう。ただ……受けて頂けた場合に言伝を預かっております。『どの事態になろうとも釣りはいらない、どちらにしろそれほどのモノを得る事が出来るのだから』だそうです」
何を得るのかは理解出来た。遊びが過ぎるのは珠にキズだと思うがな、曹操。
郭嘉も同じことを考えているようでぶつぶつと不満を漏らしていたが、机の上に目を落としてさーっと顔を蒼褪め
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