裏の糸は知らぬ間に
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色であるタケノコで示しているのだろう。曹操の軍師である稟に先に食べてみろと勧めたのはどれを先に食べる、狙うのかを見たかったという意味合いも込めて。
箸すら手に持たなかったのは曹操側の意見としては未だどこにも手を付けるつもりが無い、という意思表示。
「試してすまない郭嘉殿」
「いえ、お眼鏡に敵ったようで何よりです。何せ私はまだ名も売れていませんし、美周嬢と称されるあなたに認めて頂けて光栄の限り」
素直に謝る冥琳に対して下手から言葉を返してはいるが稟の瞳は揺るぎなく、中には野心の渦が燃えている。
――負ける気はないというのが透けて見えるが……曹操の部下らしいと言えるだろう。
「では、聞かせて貰おう。今回の交渉の要件をな。この店は私の隠れた行きつけであり、腕の立つ見張りも着けているので耳は無いから安心していい」
ふっと一つ息を漏らした冥琳はもはや戯れは不要だというようにすぐさま本題を切り出す。内容も事前に知らされていたわけでは無く、送られてきた曹操からの密使はただ借りを返す為に使いを向かわせるからという横暴な内容であった。ならばと考え仕掛けたのが今回の戯れであり、このくらいならば許されるだろうと考えていた。
「この皿が言うようにあなたのお考えの通りです。今回の交渉は今後の乱世を見据えて。幽州を掌握する袁紹軍、徐州へと移った劉備軍、そこに攻め入るであろう袁術軍、そしてあなた方孫策軍。あなた方の思惑も我が主は看破しています故、虎牢関で返し損ねたモノを利息付きで返還したいと考えています」
「郭嘉殿は幽州の公孫賛が負けると考えているのだな。今なら助けに向かう事も出来るのだろう?」
その点を突く冥琳の言葉は鋭く、稟の背筋に冷たい汗が伝う。彼女は暗にこう言っている。強大に成長する袁紹の勢力をまだ潰さないのは、静観するという事はそれでも倒す算段が立っていて、その為に我らを利用するだけでは無いのか、と。
抜き身の刃を首筋に突き付けられたような感覚に少し震えながらも、稟は表情を引き締めて口を開いた。
「前提に信頼有りきの交渉というのは難しいですね。では一つ情報を開示します。事前に我らは公孫賛軍から、攻められた場合は共に戦ってくれないかとの密使を受けていました……が、断りました。危うい状況になりかねなかった為に」
「ほう……私達でも知りえなかった情報だな。今後の展開にどんな予測が建てられたのか聞かせて貰いたいモノだ」
眉根を寄せた冥琳は自身の軍でも知りえなかった情報があったことと、公孫賛がそこまで迅速に動いていたことに感嘆の息を漏らした。
「……先程の戯れの礼として、主の行った戯れの話もしましょうか。予測の話はその後で」
稟はつらつらと、少しだけ主の才を鑑みた事を思い出してか顔を紅く染めて、公孫
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