01 「戻ってきた日常」
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飲まないから」
確かに小学生がコーヒーを飲む姿はあまり想像できない。一般的なのはジュースだろう。良いとこ育ちの人間は、紅茶といったものも飲むかもしれない。
「甘いもの食べるのに甘い飲み物ってのもあれですし、よく飲む人が近くにいると影響を受けるというか」
叔母はよくコーヒーを飲む。コーヒーを飲むと眠気が覚めるという話を聞くが、叔母には何の効果もないような気がする。
叔母だけでなく、亡くなった父さんもよく飲んでいた。叔母の話によれば、「うちの家族は小さい頃から飲んでいたかな」ということなので、俺がこの年でコーヒーを飲むのは血筋かもしれない。
人気の喫茶店だけあって桃子さんも顔には出さないが忙しいようで、俺に短く返事を返して席を離れて行った。
翠屋は賑やかであるが、決して騒がしくはない良い雰囲気の店だ。客が少ないときは、しばらくの間読書をする場所として愛用もしている。桃子さんや翠屋のスタッフはこのことを知っているため、案内してくれるのは基本的に店の隅の方だ。
今日は休日であり、あの子も定期健診で病院に行くそうなのでこれといった予定はない。しばらくここで読書をしたいが、ジュエルシード事件以降はあまり長居する気にはなれないでいる。
余計なことを考えながらも、本を読んでいるうちに注文した品が運ばれてきた。持ってきてくれたスタッフにお礼を言って、本に栞を挟んで一旦置く。
「……美味しい」
心の中にある負の考えが霧散していく気がする。
多分……桃子さんの作るお菓子が母さんの味に似てるからだろうな。ふたりで写ってる写真がアルバムにあったから、若い頃からの知り合いで同じ職場にいたこともあったのかもしれない。
「あっ……ショウくん」
コーヒーを少し飲んでから読書を再開しようとカップを手に取った矢先、誰かに名前を呼ばれた。霧散していたものが、一気に蘇ってくる。
俺の名前を呼んだのは、栗毛をツインテールにまとめたクラスメイト。休日ということもあって私服姿だ。彼女は嬉々とした笑顔を浮かべて、こちらに近づいてくる。
「何でここにいるの?」
「いや……喫茶店にいるのにその問いはどうかと思うけど」
「それもそうだね」
にゃはは、と笑う高町。事件が終わってからというもの、彼女は俺に話しかけてくるようになった。前よりも挨拶をしたりするようになったというくらいだが、隙あらば色々と話そうという気配が見え見えの状態である。
――話しかけてくるのが念話ならば、はたから見ても会話しているようには見えないため問題はないのだが……魔法関連のことは口にしないので無下に扱うこともできない。
そもそもの話になるが、何が彼女をここまで喜ばせているのだろうか。俺にはさっぱり分からない。ここが彼女の両親が経営している店
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