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IS【インフィニット・ストラトス】《運命が変わった日》
【第272話】
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ふふ、もう五時を回ってるから母さんで良いわよぉ? ……教えることは、財団でも若い子に教えてましたからねぇ。 昔の教育実習を思い出しながら授業を行ってるわよぉ」


 楽しげな声で言う母さん――身内が教師というのも、何だか変な感覚を覚える。

 いつもと違う一面の母さんを見ることが出来るからだろうか?

 ……何にしても、今の母さんを見ると前に親父から聞いたテロリスト襲撃の事のショックは和らいだように思える。

 一応親父とは毎日メールのやり取りで近状を書いてはいるが……。

 ……メールの検閲が厳しい所らしく、親父らしい文面じゃないのが気になる。

 一体アメリカの何処に居るのだろうか?

 ……やはり考えても答えが出ず、考え事を止めることにした。


「そうか……。 何にしても、母さん。 あまり失敗しないようにな」

「大丈夫よぉ〜。 うふふ、ヒルトは心配性ねぇ〜」


 ふわふわした物言いが不安になるも、まあここで心配しても仕方ないので――。


「じゃあ母さん、村雲の事は任せるよ」

「えぇ。 お母さんにドンと任せて〜」


 胸を張る母さん、山田先生の様にゆったりとさた服装の為、胸が揺れてもあまり変わらず――水着なら、弾むほど豊かに実った乳房が――。

 …………母さん相手に何を考えてるんだ、俺は。

 軽く頭を振ると、母さんは疑問符を浮かべながら思い出したかの様に言い始めた。


「あ、そうそう。 ヒルト、明日入港予定の船に、【クサナギ】が搬入されてるから時間がある時に書類にサインをお願いねぇ〜? お母さんのサインは終わったけど、ヒルトのサインも必要だからぁ〜」


 クサナギ――臨海学校で使ったIS用パワードスーツパッケージだな。


「……サインなら今やるけど?」

「んと、今その書類を持ってないのよぉ。 だから、明日以降で構わないからよろしくねぇ」


 母さんの手元を見ると、確かに現国の教科書やら出席簿しか持っていなかった。

 受け持ちクラスは無いが、生徒の名前を覚えるのに何かするのだろうか?


「……わかったよ。 じゃあ母さん、俺は戻るから」

「えぇ。 私はまだもう少しここに居るから何かあれば来てねぇ〜」


 ひらひらと手を振る母さんに見送られ、俺は――。


「失礼しましたーっ」


 頭を下げ、一礼すると職員室のドアを閉める。

 まだ外は暑いのに、鈴虫の鳴き声が聴こえてくるのは慌てた鈴虫なのだろうか?

 外は外灯の明かりが照らされていて、クラブ活動を終えた子達が寮に帰宅する姿が目に映る。

 静寂に静まり返ったIS学園廊下を、俺の足音だけが響いていた……。
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