暁 〜小説投稿サイト〜
ワンピース〜ただ側で〜
番外4話『ウイスキーピークの夜』
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人の背中がより一層に自分を虚しくさせて、反射的に出していた自分の手を見つめる。

 ……何やってるんだ俺は?
 俺はナミの彼氏じゃない。別にナミだって嫌がっている素振りを見せていたわけじゃない。それなのに……俺にいったいなんの権利があってあの腕をはがそうとしたんだろうか。ナミにとって先約なる人物がいる以上、俺はナミとどうこうなろうとかを考えるつもりはないと、そう心に決めている。
 ナミにとって大事な人とナミが一緒にいることを何よりも優先するべきだということも、既に心に決めている。
 わかっているのに……俺は今まるで彼氏気取りで動こうとした。

「……」

 情けない。 
 自然と拳に力が入ってしまって、慌てて深呼吸を3度。ゆっくりと体を弛緩させて心を落ち着かせる。

「……ふぅ」
「ほらほらあなだ……ゴホン。マーマーマ〜あなたも行きましょう」
「ってうわ、いつの間に」

 イガラッポイがさっきナミと酒場に入っていったはずなのにまたわざわざ俺を連れて行こうとこっちにまで戻ってきていた。どんだけ酒を飲ませたいんだ。いつもの俺ならナミと飲みたいから、とかいう理由で行くんだろうけど、今の自分はあまりにも情けなくてナミと飲むという気分にもなれない。
 そういうわけで首を横に振る。

「いや、悪いけど俺はいいよ。みんな行くみたいだし、船番でもしてようかな」
「まぁまぁ、そう言わず」

 ナミの時と同じ要領で俺の肩を抱いてそのまま歩き出そうとする。
 けれど残念。

「むっ……くっ……ふん!」

 イガラッポイが必死になって俺を動かそうとしてるけど俺が動くことはない。体格はイガラッポイのほうが大きいけれどそもそもとして筋力が違いすぎる。必死になって頑張るイガラッポイを見てると少し申し訳ない気持ちになってしまうけど、だからといってそれで動いてあげようと思うほど彼と親しいわけじゃない。
 数分ほどの死闘ののち、ついにイガラッポイが諦めてくれた。

「はぁ……はぁ……わ、わかりました。ではあとで数人の町人に酒や肉をもたせて運ばぜ……ゴホン、マーマーマ〜。運ばせますので彼らと酒を酌み交わすというのはどうでしょう」

 放置する、という選択肢はないらしい。
 その必死さがなんだかおかしく思えてきて軽く笑ってしまいそうになる。

「……ま、数人くらいとならいいかも」
「では、そういう段で」

 イガラッポイが満足そうに頷き、俺の後ろでのんびりとしていたゾロにも声をかける。

「あなたも――」
「――あぁ、こいつと少し話をしたらすぐ行く」

 俺と違ってちゃんと酒場に行くという言葉に、イガラッポイは「わかりました」と笑いながら酒場へと入っていった。
 少しだけ疲れたような背中のイガラッポイへごめんな
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