番外3話『クジラのいる双子岬』
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い海王類に食われかけた経験があり、それでもなお無事にカームベルトを渡りきった彼だが、別にそれら巨大海王類を退治したわけではない。
あくまでも彼が海を渡れたのは食われないように逃げて、それが成功したからであり、決して仕留めたからというわけではない……もちろん巨大海王類から生身の体で逃げきったということでも十分に常識外れたことなのだが、それはともかく。
現状において今はさすがのハントもまずいと言わざるをえないほどの状況だ。
「……すー……はー」
彼の醸す雰囲気そのものはのんびりとしているようなそれが感じられるが、全くもってそんなことはなく、内心では焦りに焦っている。なにせ彼の思考の通り、深海にまで潜られた時、海中戦を苦にしないハントでもそもそもその深度まで潜ることすらできないのだから。
幾度かの深呼吸を繰り返し、それからやっと覚悟を決めた。
「うっし、行くか!」
言うと同時。
地を蹴り、まるで弾丸のように海中へとその身を投げ出す。
――……?
海中に入ったハントの目に映ったものは理解の難しいおかしな光景だった。クジラは深海へと潜るわけでもなく、広い海へと泳ぐわけでもない。なぜか大陸の岩壁へと自身の頭をぶつけている。
――好都合だな。
とりあえずどこかへ行ってしまう様子ではない。少しだけ安堵した表情を見せるハントだが、もちろんそれも一瞬。クジラからして蟻のような小ささでしかない自分が、船を丸ごと吐き出させなければならないことの大変さは変わらない。
何度も何度も岩壁へと頭をぶつけようとするクジラに、ハントはまっすぐにその身を向かわせる。
――魚人空手5千枚瓦正拳!
海中なので心の中で技名を叫び、丁度岩壁へとまっすぐに体を泳がせるクジラへと、横合いから覇気をまとわせて黒く変色させた拳をたたきつけた。たとえば前進していた時にいきなり横合いから別の衝撃をうけると、案外簡単に吹っ飛ばされてしまうものだが、今回はさすがに体重差がありすぎて話にならない。覇気に関してもまだ習いたての頃は見聞色に偏っていたハントだが、今では武装色も同様に使いこなせるようになってはいるものの、やはり蟻がどれだけ身を固めて殴り掛かってきたところで大した威力にはならない。
ハントに殴られたクジラはわずかに身じろぎをしたもののまったくダメージを受けた様子がなく佇んでいる。ただ、蚊に刺された程度のかゆみはあったのかもしれない。ゆっくりと動きを停止して、自身へと害意を向ける存在へと頭を向けた。
――かかってこ……やばっ!
ハントめがけてそのまま体当たりを敢行してきた。もちろんクジラが動き出す前に全力でクジラの体当たりを避けようという動きを見せていたハントだが、なにせ相手のサイズがサイ
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