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剣の丘に花は咲く 
第三章 始祖の祈祷書
第二話 ルイズの恋心
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国では、このような装置を『エンジン』と言ってだな。これを船や荷車に取り付けることによって、馬や風がなくても動かせるようにしているんだ」 
「そんなの、魔法で動かせばいいじゃないじゃない? なにもそんな妙ちきりんな装置を使わなくても」

 生徒の一人がそう言うと、他の生徒たちもそうだそうだと言わんばかりに頷きあう。

 まあ、この世界ではそうだよな。

 士郎は周囲の反応に苦笑いすると、さらに説明を続けた。

「まあ、確かにそうだな。しかし、この装置の利点は、メイジがいなくても使えるということと、疲れ知らずという点だ。例えばだな、早く船を動かすため、帆に風を送るメイジを雇おうとすると、船を出すごとに何度もメイジと契約しなければならない。しかも、メイジは人間だ、休息も必要だし食事も睡眠も取らなければならない」

 士郎はそこで言葉を切ると、教室を見渡した。
 生徒たちは、それぞれ思うところがあるのだろうか、難しい顔をする者や頷く者(タバサは読んでいた本を枕にして眠っていた……)等色々いたが、興味薄げだった生徒たちは、いつの間にか興味が出てきたようだった。
 士郎はそれを確認すると話しを続ける。

「しかし、一度この装置を取り付ければ、燃料が尽きない限り、ずっと動かすことが出来る……メイジがいなくても(・・・・・・・・・)な、もちろん、故障すれば動かなくなってしまう等の欠点等があるが、それでもメイジがいなくても、平民だけで動かせるという利点は大きいだろう。特に商人などは、これがもっと改良され、ある程度の結果を出せるようになれば、飛びつくだろうな」
「メイジがいなくても……」 
 
 生徒の一人が惚けた様な声を漏らした。

「そうです!そうなんです! やはりシロウくんは素晴らしい! まったくその通り! 私の言いたいのはそのことだったのです!」

 コルベールが胸を張ってそのように言うと、教室中の生徒が疑いの眼差しをコルベールに向ける。
 コルベールは生徒たちの反応に顔に汗を滲ませると、顔を勢い良く教壇の上にある蛇の人形に向け、乾いた笑いを浮かべた。

「ハッ、ハハハッ……さ、さて皆さん。誰かこの装置を動かしてみないかね? な、なに! 簡単ですぞ! 円筒に開いたこの穴に、杖を差し込んで“発火”の呪文を断続的に唱えるだけですぞ。ただ、ちょっとタイミングにコツがいるが、慣れればこのように、ほら」
 
 コルベールはふいごを足で踏み、再び装置を動かした。爆発音が響き、クランクと歯車が動き出す。そして蛇の人形がぴょこぴょこ顔を出す。
 
「ゆ、愉快な蛇くんがご挨拶! このように! ご、ご挨拶……」
 
 しかし、誰も手を挙げようとしない。只々コルベールに白い目を向けるだけ。
 コルベールは肩を落としてため息をつ
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