バレンタインデーキッズ 〜名誉をかけて〜
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ないか!それとも君は!自分の心臓を!アマゾンのジャングルにでもほっぽり出す気かぁい!?」
「いいかげんにしろよ兄!」
「それはこっちの台詞だ!君のすることは1つ!それを送り主に返して、一生チョコを渡すなと釘を刺すことだけだ!それなのに君はいつまでもグチグチグチグチと無駄口ばかり!反抗はもういいから早く持っているチョコを全て持ち主に……」
「うるさい」
その声はとても静かだった。でも僕の耳の中には一瞬で取り込まれ期待してもいいという信号を脳が発することに賛成だと脳が結論を出した。
「三手火神さん!?」
そう、彼女こそ僕が心から愛して溶かしてやまない千代子ちゃんだ。
「ここはあなたの家じゃないの」
千代子ちゃんはそれだけ言うとスタスタと去っていった。
「すみませんでした」
弟の謝る声が聞こえる。だがそんなことはどうでもいい。それより今、千代子ちゃんの起こした空気の振動を耳で感じることが出来た。
「フフッヒヒャ……おっとっと」
僕は慌てて口をつぐんだ。そうだ。千代子ちゃんの理想の一端を、僕が満たせるのだ。
「フフフ……、千代子ちゃん……、フフフ……」
僕は千代子ちゃんを盗み見た。大丈夫だ。あの子は。
……大丈夫?本当に?
「……千代子ちゃんは、大丈夫だ。でもね、許さないよ、その他全員は!」
僕は拳を握り締めると駆け出した。
「おい!兄!」
弟が叫んでるけど無視だ無視。
廊下では人目もはばからないうすのろばか共がチョコだの求婚だの好き勝手にしてる。
「キャー!黎人様ーっ!」
「私のチョコを受け取ってー!」
「私のチョコの方が美味しいわよー!」
「黎人様の為に私、インドまで行ってきてカレールー作ったんですぅ!」
「はいはい押さないで」
なんだあの男の苦笑しつつも嬉しそうな顔は!
ああいう中途半端な顔をすれば、みんなが好意的に勝手に解釈してくれる。
やつ程のかっこよさなら、それも出来る。
「ふざけるな砕けろおぉおぉ!」
僕は節分の様に飛び交うチョコを右手に掌中に収めるイメージをすると、一気に握り潰した。
パパパパギャッ!!
「愉快だよ粉々だよ無に帰したよ!」
僕は笑った。
「……大丈夫だよ、みんなの思い、ちゃんと受け取るから」
黎人とかいうやつはニコリと微笑んだ。
「なんだとふざけるなクソッ!」
僕は落とし穴に落ちたような気分でそこを後にした。
「違う違う今のは違う!!」
僕はそう自分に言い聞かせながら他の標的を探した。
「あの……これ」
とかなんとか言ってたら女が男にマフラー渡してんじゃねぇか微妙にシーズン過ぎかかってんだよ!
「僕なんかで……いいの?」
男が頬を赤くしながらそう尋ねると、
「……うん!」
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