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Meet again my…
W バースデイ・アゲイン (1)
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 目覚める。
 麻衣はベッドにいなかった。代わりにリビングから食べ物のにおい。律儀に朝食を作ってくれるらしい。

 起き出して着替える。荷物整理の時にもダンボールから出さなかった特別な服。
 今日、この日、絶対に着ると決めていた色。インナーもアウターもトップスも全て黒で揃えた一式。


 ――“黒でも喪でもない。君の色は……”――


 無言で全ての衣服に袖を通した。そして、矢筒と弓を納めたケースを担いで部屋を出た。

「あ、おはよう! ナ…ル…」

 おはよう、麻衣。ところで朝から何固まってるんだ?

「あ、と、とにかく座ってっ。今ちょうどできたとこだから」

 ? 何で目を逸らしたんだ? 自分ではおかしな格好をしていると思わないのに。麻衣から見ると変なのか。あるいは、この色を着るには僕が若輩だと感じ取ったのか。彼女のシックスセンスは天才的な域だというから。

「今日のこと、ナルなら何か考えてあるんでしょう?」
「今日まで10年間だ。作戦なんて腐るほど考えてきた」

 少し厭味な言い回しになった。こういうのを日本語では「気障ったらしい」というんだろう。
 でも麻衣は茶化しも言い返しもせず、綺麗に笑った。

「なら安心だね。朝ご飯にしよっか。いざ行って空腹で倒れました、じゃ格好つかないよ」

 それは全面的に賛成だ。


 ――朝食をとりながら麻衣に言い含めた「作戦」は至ってシンプル。
 奴の持ち駒は以津真天と土蜘蛛。土蜘蛛はいいが、以津真天の相手は僕にしかできない。純正の妖怪なんて、正面から「戦って」生き残れる霊能者は僕らの世代にしかいない。

「土蜘蛛のほうはあたしの九字でもどうにかなるよ」
「ああ。これで君が土蜘蛛にも敵わなかったら何を言われても置いていってる」

 恨まれようが、目の前で傷つかれるよりマシだ。

「日高は式王子が健在である限り自身で戦うことはない。それがあの女のスタイル――流儀、らしい」
「流儀、かあ」
「逆に言えば、式を退治して奴を丸腰にすると、式よりよっぽど残忍な日高自身が襲ってくる。全力を出されたらどんな霊能者も勝てないだろう。だから式は消すんじゃなく無効化するに留める。日高はあの女自身が、盾が消えたと感じ取った瞬間の隙を突いて、僕が――やる」

 麻衣は強張った顔で、それでも肯いた。

「僕はあの女の正面に立たないといけない。式王子の無効化方法を教える。麻衣は拠点に忍び込んで式符を壊してくれ」

 以津真天の式符は「供養されず放置された遺体」。それを奪えば使役契約は破綻、日高は法負け(要するに制御できなくなる)して――僕の描いたシナリオ通りの死に方をする。

「何か質問は?」
「ない。ちゃんと理解したよ。今すぐ行く?」
「ああ
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