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久遠の神話
第七十九話 次期大統領としてその四

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「もうな」
「ですね、では」
「明日にでもそうした政策は中断される」
 領事はスペンサーに言った。
「本当に色々変わるぞ」
「この領事館もですね」
 ここにいる人間もだというのだ。
「人材までもが」
「そうなる、私も君もな」
 移動、この言葉が出て来た。言葉の外で言ったのだ。
「どうなるかだな」
「日本を去ることもですか」
「あるだろうな、それも」
「そうですか、それはまた」
 スペンサーは日本を去るということについては微妙な顔で述べた、そして何故微妙な顔になったかというと。
「寂しいですね」
「寂しいか」
「はい、いい国ですから」
「そうだな、日本はいい国だな」
「空気もいいですし街は過ごしやすく」
「料理もいいな」
「水もいいです」
 そうした周りの環境がいいというのだ。
「何もかもに満足していますが」
「特にこの街はな」
「はい、神戸は」
 この街は特にいい、スペンサーから見てもだ。
「いい街です、私はシカゴに生まれ育ってきましたが」
「そして空軍士官学校にいてだな」
「多くの街、内外を回ってきましたが」
 その中でもだというのだ。
「神戸はとりわけ」
「いい街だな、ステーキも高いがな」
「神戸牛ですね」
「あれはいい肉だ」
 領事は太鼓判を押して語った。
「非常にな」
「日本の牛肉はいいですね」
「あの霜降りはいい」
「確かに高いことは高いですが」
 アメリカの肉と比べるとだ、だがだというのだ。
「しかしその味は」
「最高だな」
「本当に」
 スペンサーは笑顔で語る。
「幾らでも食べられる感じです」
「値段を抜けばな」
「とにかく高いです」
「日本は物価が高いことは知っていた」
「しかしそれを差し引いても」
 高いというのだ、神戸牛は。
「ですから幾らでも食べられますが」
「幾らでも食べるとな」
「お金がなくなります」
「全くだな」
 二人は苦笑いで述べた。
「それがネックだ、しかし」
「確かに美味しいです」
「日本の酪農業者は頑張っているな」
「努力家であり研究家ですね」
「日本人の長所だな」
「確かに差別主義者もいますが」
 そうした下劣な輩は一部だ、どの国もこうした人間は一部だ。しかしそのごく一部がその醜さ故にどうしても目立ってしまうのだ。
「日本は全体として素晴らしい国です」
「全くだな、だから離れるとなるとな」
「悲しいですね」
「本当にな」
 こう話すのだった、二人で。
 領事とそうした話をした次の日にだ、スペンサーは急に呼び出しを受けた。その呼び出しの相手はというと。
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