第49話 「男子誕生」
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、ホッと胸を撫で下ろしているはずじゃ。案外怖いからのー。
通信が切れたのを見計らって、リッテンハイム候が皇太子殿下に近づいてきた。
「皇太子殿下、各マスコミ連中がやって参りました」
「そうか、記者連中に戦闘は回避されたと伝えろ。帝国同盟の双方に緊急速報を流す。まあ強引に攻め込んでやっても良いんだが、策に乗ってやろう。次はないがな」
次はない、か……。
向こうの思惑を看破したゆえの発言じゃな。
そしてそうそう、思惑通りに行くと思うなよ、と緊急放送を通じて、同盟側にも伝える気なのじゃろう。それにしてもここ数年、戦闘が行われぬのう。
良い事なのじゃろうが……。戦争の行われない生活と言うのも、おかしな気分じゃ。今まで当たり前のように、戦争が行われていた反動だろうか?
戦争がないという事は、必ずしも良いとは限らぬ。少なくとも統一してしまいたい帝国にとっては、だ。まあ、向こうは向こうで統一などされては堪らぬじゃろうが。
■オーディン某所 とある平民家庭■
徴兵された息子が除隊を目の前にして、攻め込んでくるらしい叛徒との戦争に狩りだされ、イゼルローンに向かっている。
この戦闘が終われば、徴兵期間も終わる。無事に帰ってきてほしい。
皇太子殿下が帝国宰相となられてからというもの、大きな戦闘もなく。ホッとしていたのだが、最後の最後でこの様なことになってしまい。
妻は寝込んでしまった。
私自身、気力が萎えてしまいそうだ……。
酒量が増えてしまっている。無事に帰ってきて欲しい。
居間で酒を飲みつつ、ぼんやりしているとTV画面から、緊急放送のアナウンスが聞こえてきた。
戦闘が始まったのか?
胃がキュッと痛んだ。
「自由惑星同盟との戦闘は回避されました。宰相閣下のご命令により、迎撃艦隊はイゼルローンでの補給を終え次第、オーディンに帰還いたします」
グラスが手から滑り落ちた。
床の上に琥珀色の液体が広がっていく。それをぼんやり視線が追う。
いま何を聞いた?
戦闘は回避された?
画面の向こうで女性がもう一度繰り返している。
戦闘は回避された。
そうか、そうなのか……。
息子が帰ってくるのか?
立ち上がろうとして、膝が折れた。床に這い蹲るように進む。
「か、かあさん。戦闘が回避されたぞ。帰ってくるんだ」
情けなくも無様な格好で、寝室まで向かう。
女性の弾む声が背後から聞こえていた。
誰もいない居間の画面で、女性の手元に新しい知らせが届いていた。
それに目を向けた女性の目が驚きに見開かれた。
「あ、新しい緊急放送です」
女性の声が上ずっている。ほほも高揚しているのか、赤く染まっていた。
「本日、午後十時二十六分。アレ
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