プロローグその1:デバイスは小包で届けられました
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お土産として俺に送りつけるというもので、色々と突っ込みどころ満載の兄貴にして、最も迷惑な行為であった。
実際兄貴のおかげで、ただでさえクソ狭い俺と親父が暮らす家(築50年、木造モルタル2階建てボロアパート)が得体の知れないグッズに埋め尽くされ、魔窟と化している。
今回もどうせそんな部屋を圧迫する例のブツだろうなと、俺はそう思って小包を開けると、どうやら今回ばかりは天が俺に味方してくれたようで箱の中には親の仇のようにミッチリ詰め込まれた緩衝材に埋もれて二つのキーホルダーみたいな物が入っていた。
一つは、交差する馬上槍と盾が象られたエンブレムのようなキーホルダーで、くすんだ鉄の色がなかなか良い味を出している。
もう一つは、弓に無数の矢が掛けられているエンブレムで、こっちの方も中々渋い濃緑色で鈍く光っていた。
兄貴にしては割ともまともなお土産に、その時俺は少し驚いていた。
子供の土産にしてはド地味だが、今まで送ってきた物に碌な物が無いのはいつもの事でありそのギャップが凄まじい。
ちなみに、送ってきた物で最も碌でも無かったのは、インカ帝国の隣にあったとされるチャッカ公国の貴族が使っていたタン壺(兄貴の手紙より抜粋)である。
俺がそういうのを知らんのもあるが、それにしたってどうだろう、全く価値が見いだせない。
まぁ、それはおいといて。
小包の中にはキーホルダーと一緒に一枚の絵ハガキが入っていた。
多分現地の写真だと思うんだけれど、アホっぽくピースサインをしている24歳のバックに月っぽいのが2個あるように見えるのは多分気のせいだろう。
そんなネタ写真ぽい絵ハガキの裏にはミミズが這ったような下ッ手くそな字で短くこう書かれていた。
――槍一へ。
前と『けー坊』にこれをやるから、絶対に無くすなよ。
もしヤバい事があったらこれを使えば何とかなる
……と、思うよ。
全く意味が分からない。
つーか、良い歳こいて俺より字が下ッ手くそなのってどうなんだと俺は思った。
まぁ、日本よりも海外に居る時間の方が長いから日本語忘れてんのかも知れないが…。
でも、最後の「……と、思うよ」ってのがイラっとすんな畜生。
兎も角、俺の他に『けー坊』にも渡せというのが少し気になる。
『けー坊』というのは、俺の幼馴染にして唯一無二の友人である『五十鈴啓太(いすず・けいた)』の愛称で、親父と兄貴は啓太の事をこう呼んでいる。
その度に啓太はズリ落ちた黒縁の眼鏡をブリッジの所で持ち上げて「その呼び方、何とかなりませんかね」と抗議を示すのであるが、他人の子供をイジるのが大好きなあの二人がそんな事を聞くつもりなど毛頭無いので半ば諦めているのが現状である。
啓太のそんな
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