第三章
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バットを振る始末だ。これでは打てる筈がない。
「バットにかすりもしないのか・・・・・・」
巨人ファンは無念の表情でそう呟いた。やがて阪急が突き放しまずは阪急が勝った。
「まずは一勝か」
上田はベンチに戻ってくる山口を見てそう呟いた。
「どうやら敵さんはかなり萎縮しとるな」
彼は巨人のベンチを見た。まだ山口のボールの衝撃から目が醒めないようだ。
「流れはうちに大きく傾いとる」
伊達にその頭脳を買われて球界に入ったわけではない。彼は流れを素早く読み取っていた。
あとは一気に攻め立てる。西本以来の阪急の攻め方だ。
「巨人といえど昔とは違う。勝たせてもらうで」
上田はそう言うとベンチをあとにした。彼はこのシリーズの勝利を確信していた。
その次の日は雨だった。試合は当然流れた。
「雨位でうちの勢いは消えんで」
上田はその雨を見上げて言った。前では室内練習場で選手達が汗を流している。
皆その顔には覇気があった。誰もが勝利を確信していた。
対する巨人の練習風景はまるでお通夜のようであった。それを見た誰もがシリーズの結末を予想した。
翌日第二試合が行なわれた。阪急はベテラン足立光宏を投入してきた。巨人の先発はライトである。
足立はベテランらしい投球で巨人打線を抑える。阪急打線はライトを打っていく。試合は阪急有利に進んでいった。
そして最後は山口を投入した。そして危なげなく二勝目をあげた。
「巨人には今まで散々痛い目に遭わされてきたからな」
足立はベンチでうなだれる巨人ナインを横目で見ながら言った。
「今度は負けるわけにはいなかい。絶対に日本一になる」
彼は自慢のシンカーで巨人打線を抑えた。そして山口も第一戦と同じく剛速球で巨人打線を抑えた。
だがここで巨人は見抜いたものがある。山口のボールの軌跡だ。
「もしかしたら」
彼等は思った。
「打てるかも知れない」
今の山口は無理だろう、今の巨人打線では。しかし。
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