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駄目親父としっかり娘の珍道中
第50話 決め台詞は【アポ!】
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け好かない野郎だぜ! まるで下種野郎だな」
「下種はその女の方だ!」
 突如、別の方から声が響いた。声のした方を振り返ると、其処には先ほど何所かへと散って行った筈の賀兵衛と浪人達が入り口を固めているのが見えた。
 先ほどの殺気じみた目線もまた健在でこちらを睨みつけているのが見える。
「な、戻って来た!?」
「ふん、案の定と言う奴じゃな。何か臭うので戻って来てみたらこれだ」
 どうやら老人の鼻が利いたせいだろう。完全に逃げ道を塞がれてしまったようだ。
「おいマダオ! お前がお漏らししたせいでばれちまったじゃねぇか! どうしてくれんだよぉゴラァ!」
「えぇっ!? お、俺のせいなのぉこれ?」
 完全にやぶ蛇であった。少なくとも長谷川のお漏らしと老人の鼻は全く無関係なので此処に書き記しておく事にする。
「まぁ良い。貴様等の話は大体聞かせてもらった。要するに勘七郎は貴様等の言うその浪人が匿っているようだな。となればもうその女に用はない」
「他の奴らはどうします?」
「ガキ二人は生かしておけ。人質として捕まえておけばそいつ自らやってくるだろう。その後で浪人共々始末すれば良い」
 恐ろしい事を惜しげもなく言って来る辺り、この老人の目は既に狂気の域に達しているようだ。最早話し合いで解決など無理に等しいと言えた。
「あ、あのぉ……自分は無関係なんでお暇させて貰って宜しいですかぁ?」
「この場を見てしまった以上誰一人として生かしては帰さん。運が悪かったと諦めるんだなぁ」
 老人のその言葉に長谷川の顔は真っ青を通り越して真っ白へと変貌してしまった。まぁ、どの道あんまり関係なかったりするのだが。
「賀兵衛様、貴方は勘太郎様がどんな思いで過ごしていたのかお気づきになられなかったんですか? あの人はずっと、外の世界に憧れていたんですよ!」
「黙れ! 薄汚い下種な女の分際でワシの勘太郎をかどわかしたその罪、万死に値する! 貴様のせいで、貴様のせいでワシが人生を賭して築き上げた作品を台無しにされたんだぞ! 貴様にその痛みが分かるか?」
「作品? その作品って何ですか?」
「女のお前には分かるまい! 男とは、一生を賭して一つの芸術を作り上げる。ワシにとってそれはこの橋田屋の事じゃ! その橋田屋を完璧に仕上げる為ならば、ワシはどれ程汚れても構わん! 例えこの手を血に染めてでも、この作品は仕上げて見せる!」
 言い終えた後、老人は周囲の浪人達に掛かれと合図を送った。
 咄嗟に身構える新八達。
 一時の沈黙が生まれた。老人が幾ら合図を送っても、回りの浪人達は一向に動こうとはしない。
「どうした? 何故掛からん! ワシの言う事が聞けんのか?」
「すんまっせぇん、何か話が重いんでぇ、付き合ってられませんわぁ」
「何だと?」
 老人の顔が強面になって
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