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駄目親父としっかり娘の珍道中
第50話 決め台詞は【アポ!】
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の肩を掴んで必死に訪ねて来た。彼女の目の色を見る辺り相当心配だったのだろう。そんな女性の手を優しく下ろしながら新八は彼女を心配させないようになるだけ落ち着いた表情を浮かべて見せた。
「安心して下さい。その子なら無事です。今家のオーナーと一緒に居ます。オーナーと一緒なら絶対に安心できますよ」
「オーナー?」
「僕達はこの町で万事屋と言うのを営んでいるんです。まぁ、聞こえは良いんですけど実際には何でも屋って言う仕事ですよ」
 後ろ頭に手を当てながら新八は語った。その言葉を女性は必死な形相のまま聞いていた。やはり、何かしら理由があるのだろう。
 先の老人の豹変振りと良いあの殺気だった浪人達と良い、只事じゃなさそうだ。
「話してくれませんか? あの子とこの橋田屋は一体どんな関係なんですか?」
「勘七郎は……橋田屋の主、橋田賀兵衛様の一人息子、【橋田勘太郎】の子なんです」
「やっぱり」
 何となく新八は予想が出来た。恐らくあの老人、橋田賀兵衛はその赤子、即ち勘七郎をこの家の跡継ぎにしたい為に狙っていたのだろう。
「でも、それじゃその父ちゃんはどうしたアルか? 子供がこんな大変な事態に巻き込まれているってのに薄情な父親アルよ」
「勘太郎様は、もう居ません」
「どういう事アルか?」
「勘太郎様は、もう随分も前に亡くなっているんです」
 女性のその言葉に、回りが一瞬静寂に包まれた。その空気の中で、女性は静かに、低いトーンのまま話を続けた。
「勘太郎様は、元々病弱な身で、ずっと家に篭り切りだったんです。そんな勘太郎様のお世話を私がするようになって、初めは勘太郎様の悪戯に振り回されてばかりだったのですが、誰にもでも分け隔てなく接してくれるあの人に、何時しか私は惹かれてしまったんです」
 その後の女性の進言は続いた。彼女の話によると、女性は勘太郎と共に橋田屋を夜逃げ同然で抜け出し、江戸の小さな長屋にて貧しいながらも慎ましく暮らしていたそうだ。だが、風の噂を頼りに勘太郎の居場所を探り当てた父賀兵衛の手により勘太郎は連れ戻され、それ以降二人は二度と会う事はなかった。
 それから数年の後に、女性は勘太郎の子、勘七郎を生み、亡き夫の忘れ形見を必死に育てていたのだ。
 しかし、今度はその勘七郎を奪おうと賀兵衛はその魔の手を伸ばしてきた。
 彼女はその手から勘七郎を守る為に、断腸の思い出勘七郎を銀時達の家の前に置いて去って行ったのであった。
 これが、女性の経緯でもあった。
「そんな事があったんですね」
「辛いなぁ。俺も相当辛い思いしてたけど、あんたの方がよっぽど辛い思いしてたんだなぁ」
 話を聞き終わった後、後ろの方で長谷川が涙を流して聞き入っているのを見た。今回、長谷川は上も下も泣きっぱなしである。
「それにしてもその賀兵衛って爺は本当にい
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