第十二章
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は立ち上がった。周りでは近鉄の選手達が藤井寺のグラウンドに散らばり汗を流している。
「この連中と一緒にな。今度こそ日本一になる。その為には」
彼はここで眦を決した。
「あいつ等も倒すさなあかん。その為にこいつ等を育ててるんや」
選手達は黙々と練習している。西本はそんな彼等を見渡した。
「御前等やったらできる、絶対日本一になるんやぞ」
新たな戦いの幕が開こうとしていた。勝利の美酒を味わう阪急の選手達は後にこの西本が育て上げた近鉄と二年越しの球史に残る死闘を展開することになる。
阪急も近鉄も西本が育て上げた球団である。しかし彼等は同じ師を持ちながらその身体も心も別である。だからこそ競い合い、激しい死闘を繰り広げたのだ。
西宮も藤井寺もシリーズが終わると練習のみに使われるようになる。そこには戦いの匂いはなくなる。
だがそこに住む野球の神々は待っているのだ。再び激しい戦いがそこで行われることを。
西本が育てた二つのチームは今でも互いに競い合い、熱い戦いを続けている。それは決して同じものではない。彼等はそれぞれ西本の野球を受け継いでいる。だが一つではないのだ。
その二つの野球がこれからも行われる。人々はそれを観る為に今日も球場へ向かうのである。
恩返し 完
2004・7・28
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