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二日続けての大舞台
第五章
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思った。そして次のサインもやはりスライダーだった。
 山内もそれは納得した。彼も柳原が変化球に弱いことは知っていたのだ。
 そのスライダーは真ん中に入った。甘い球だ。だがいつもの柳原には打てないボールだ。
(引っ掛けてくれよ)
 香川はそう思った。バットを振ってくれることを願った。そして柳原は振った。
(よし!)
 彼はここで会心の笑みを浮かべた。勝った、そう確信した。
 しかしこの日の柳原は普段の柳原ではなかった。彼は無心のままバットを振ったのだ。
「いける!」
 彼はバットを振った瞬間そう思った。変化球に対する意識はこの時不思議な程なかった。ストレートを打つ時と同じように無心で振った。
 振り抜いた。無心だっただけに打球は派手な音と共に飛んだ。
 弾道は低かった。香川はそれを見た時しまった、と思った。
「同点か」
 打球は左中間に飛んでいる。だが低い。勢いもある。狭い藤井寺のことを考えるとヒットで済む。
「西武球場や後楽園じゃなくてよかったな」
 この時は狭い藤井寺に感謝した。しかしそれは一瞬だけだった。そう、藤井寺は狭いのだ。
 打球は一直線にスタンドに入った。弾丸ライナーでレフトスタンドの最前列に飛び込んだ。
「え・・・・・・」
 香川は最初目に映るその光景を信じられなかった。夢でも見ているのかと思った。
「嘘だろう!?」
 山内もそんな顔をしていた。彼等だけではない。南海ナインもベンチも同じだ。しかもそれは近鉄側もであった。
 打った柳原も呆然としていた。しかしそれは一瞬のことだった。彼等はその瞬間時を止めてしまっていたのだった。
 球場内が爆発的な歓声に包まれた。柳原はその声にようやく我に返った。
「ホンマのことやったんか!?」
 彼は狐につままれたような顔をしていた。
「おい柳原、はよベースに向かわんかい!」
「ボサッとしてベース踏み忘れるなや!」
 観客からの声が飛ぶ。彼はそれに従うようにようやく一塁ベースに向かった。
 そしてゆっくりと回った。ホームではナインが総出で待っている。
「よっしゃあ!」
 ホームを踏んだ彼はもみくちゃにされる。まさかの代打逆転満塁サヨナラホームランであった。
「まさか二試合続けて起こるなんてな」
 香川は顔を顰めながら言った。まだ信じられなかった。
「けれどこんな体験した野球選手って他にいないだろうな。悔しいけれどそう思えばいいか」
 あまりのことに今でも悔しさはない、と香川は言う。
「あの時は別ですけれどね」
 ここで彼は苦笑した。
「けれどこれが近鉄の野球、パリーグの野球ですね」
 パリーグで過ごしてきた彼はここでこう言う。
「こんなことはセリーグ、いや他の国のどのリーグでも起こりません。パリーグだからこそ起きるんです」
 その声
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