カナリア三浪
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んだな。俺」
「燃えていいじゃない」
「あの、胸に刺さる、本物の叫びが…俺も叫びたかったんだな」
「今日もいい歌だったじゃない」
「どこに向かうんだか」
俺たちは再会を軽く約束して別れた。男女がお互いに飽きて別れるような別れ方だった。風が心地よい。
もうクリスマスは終わるよ。会えるかな?
女にメールした。返事はすぐ返ってきた。彼女の所に向かう。
彼女が俺の間合いに入る時、笑顔とともに目をしばたかせる。薄いビニールを破るみたいに。そんな境目があるのだろうな。それはもしかすると女心の中にあるずるさを隠すものかもしれないけど。または『苦しい時こそ笑え』というムエタイ魂か。そんなことを考えて彼女の部屋まで歩く。
彼女は『アッ』と鳴き、股間は『ペッペッペ』と鳴く。アッペッペッペッペッペアッアッペッペアッアッアッ! と愛し合った。愛の交わりにふさわしくない『ペッペッペ』という音は、人間であることから逃れることが出来ない肉体の音。
「本当の意味で愛し合うって、国境の線を引くことだと思う」彼女がギロチンみたいな名前のコーヒーメーカーでコーヒーを淹れるとき言う。「それは相手を愛して浮気しないこととは違うよ。でもね、平和すぎる夢の中から出て行って、体の中に確かなボーダーラインを引くことなの。これは愛で、あれは愛じゃないという国境。それがはっきりするの」
彼女の中でははっきりしているかもしれないが、俺には馴染まないセリフだった。何せ今さっきまでエクスタシーを感じていたのだから。出し切ってしまった体に、国境は無いように思える。
彼女の姿は愛し合った後、都会の月みたいだった。精錬な光を受けて俺のところに何かの答えを届けにきた人。何かに気づかなければ渇いてゆくわよ。そう言われている気がしたのは、生気を使い果たした後のことだから。
「私がどうしてこの人が好きか知ってる?」ラジオのDJの話らしい。「この人さ、愛と嘘、別けること出来るんだよね」
オレンジ色のスタンドを消して、カーテンを開けて外を眺めると、黄色い街灯に照らされて、雪が濃く降っている。世界は閉じていた。
彼女に会うと高校時代に戻る。自分の中に真実を知らないという不安があって、出口を求める若さが感じられる。何かを知っているようで、大事なことを見過ごしてしまっているのではないか。その不安が少し臆病に、謙虚にさせる。抱いた後の彼女は世の中の広がりと行き止まりを同時に表す。
「閉じている世界が好きかも」彼女に言った。
「開いていなきゃ他人の事わからないよ」
「俺は、いい詩が浮かぶ時 閉じている感じだな」
「それは開いてるよ」
「いや、閉じてる。的を射るには他人じゃなく自分を見るんだ」自分の言葉を理解しようとして難儀する。自分の中に他人とリンクすることがなかったら、単
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