―悪魔の囁き―
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「なんでだよ……」
デュエル・アカデミアの地下通路、十代の疑問を呈する呟きが響き渡った。そんな小さい呟きが聞こえるほど、その場は静まり返っていた。
「なんでなんだよ!?」
遂には爆発するかのように大声を出したものの、その声に答える者はいない。名指しでは無かったが、質問をされている者は分かっている筈なのだが。
「なんでだよ……遊矢……」
異世界に来てからの彼の初の本格的なデュエルは、友人である黒崎遊矢とだった。その後ろには黒幕であるマルタンの姿が控えているが、遊矢には操られている様子や、デュエルゾンビになっている様子はない。
彼はいたって正気のまま、マルタンの姿をした怪物の尖兵として、十代とデュエルする道を選んだのだった。
――時は少しだけ遡る。
遊矢と明日香が背中合わせにデュエルを開始し、デュエルゾンビに対して勝ち目のない戦いに徹している時のことだ。異世界に来る前も含めたデスデュエルにより、体力を既に限界まで酷使していた遊矢が遂に、相手からの必殺の攻撃を受けた。
……いや、受けるところだった。そのモンスターは覚悟していた遊矢のモンスターには向かわず、明日香の方へと向かっていたからだ。
「リバースカード、《ドゥーブルパッセ》を発動!」
明日香の力強い声が響き渡り、モンスターのダイレクトアタックは明日香へと向けられる。《ドゥーブルパッセ》……明日香の愛用するカードの一枚であり、ダイレクトアタックを自身で受ける代わりに、自身のモンスターを相手に攻撃させるピーキーな罠カード。
かくしてモンスターの攻撃を明日香が受け、《ドゥーブルパッセ》による一撃がデュエルゾンビを蹴散らした隙をつき、二人は壊していた壁から脱出した。そのまま地下通路へと抜け、デュエル・アカデミアにある地下迷宮へと逃げることに成功したのだ。
――だが、直接攻撃を受けた明日香はそこで限界だった。ライフポイントは残っていたものの、その一撃によって気絶しており――デスデュエルによって体力を無くして、そのまま衰弱死してしまう危険性すらあった。
「待ってろ、明日香……」
遊矢は明日香を背負って、三沢との合流地点である体育館に向かったものの――もちろん彼も倒れる寸前である――二人の前に立ちはだかる影があった。
遊矢が言うところの《マルタンの姿をした怪物》。悪魔の右腕をしたデュエルゾンビの親玉……いや、今回の事件の黒幕である。彼はニヤリと笑いながら、手から火球を出して遊矢に向かって放つ。
無論遊矢にそれが避けられる筈もなく、あっけなく吹き飛んだ後に、背負っていた明日香をマルタンの姿をした怪物に奪われてしまう。気絶した明日香の首筋に腕をかざし、いつでも殺せる、とでも言いたげな笑みを浮かべながら
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