第一章
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第一章
二日続けての大舞台
野球とはまさに筋書きのないドラマである。
しかしだからといって奇跡がそうそう起こるわけではない。滅多に起こらないからこそ奇跡なのだから。
だがそれが起こる時にそこに居合わせた者は感動に包まれる。それが野球の素晴らしさだ。
「それでも二日続けては起こらない」
それは誰もがそう思う。柳の下に二匹もどじょうはいない。
だがこの時は違っていた。昭和五九年近鉄バファローズはその二匹のどじょうを捕まえたのだ。
六月のことであった。舞台は藤井寺球場、相手は同じ関西の球団南海ホークスである。
「南海や阪急と戦うのは他のチームに比べて気が楽やわ」
こう言うファンもいた。
理由は簡単である。距離が近いからだ。お互い電車で楽に通える距離である。藤井寺も西宮も大阪も電車で一時間もかからなかった。互いのファンは遠足に行くような気分で相手の球場に行ったものであった。
そして親会社が電鉄の会社だったことがあり何処か兄弟意識があった。特に近鉄と阪急はかって西本幸雄に率いられたこともありその意識は強かった。だからといって乱闘が起こらないわけでもなく応援団同士の野次合戦もあったがそれでも阪神ファンが巨人に見せるようなああした異常な敵愾心はなかった。あくまで好敵手同士であったのだ。
この年パリーグは阪急の独走状態であった。強力な助っ人ブーマーが大暴れして阪急を引っ張っていた。対する近鉄と南海は瞬く間に離されてしまっていた。
だがまだ望みはあった。彼等は阪急に追いつき、追い越そうとこの試合に挑んでいたのだ。二位と三位にあった。まさしく挑戦者決定戦であった。
藤井寺球場、近鉄の本拠地である。ここで一人のベテランがバットを振っていた。
加藤秀司であった。かっては阪急の四番としてその黄金時代を支えていた。
彼は西本にそのバッティングを買われ阪急に入団した。そして彼により育てられたのであった。
気性の激しい男であった。乱闘を起こして退場になったこともあればシリーズで審判の判定に噛み付いたこともある。その意外とも言える攻撃性で阪急を引っ張っていたのだ。
だがその彼も衰えが見られるようになった。それは打撃よりもむしろ守備に顕著だった。それに危惧を覚えた上層部により彼は広島に水谷実雄と交換トレードされたのだった。
ここで彼は肺炎になりシーズンを棒に振った。それで今度は近鉄に出されたのだ。
「まさかここに来るとは思わんかったな」
加藤は藤井寺に来た時思わずこう言って苦笑した。
「何か阪急と違和感があらへんのう」
それもその筈であった。阪急も近鉄も西本が作り上げた球団なのだから。
見ればグラウンドにる選手達の多くは西本により育てられた選手達だ。つまり彼
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