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錬金の勇者
6『ビーター』
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と掌を広げた、その時。

「なんでや!!」

 ボス部屋に、大声が響いた。声の方向を見ると、キバオウが座り込んでいた。

「なんでや!何でディアベルはんを見殺しにしたんや!」
「見殺し……?」

 アスナが怪訝そうに呟く。

「そうや!ジブンはボスの使う技知っとったやないか!あれを伝えとけば、ディアベルはんは死なずに済んだはずや……」
「それに……」

 そしてキバオウのつくった流れに乗る形で、確かディアベルの腹心の一人だったはずの茶髪の男性プレイヤーが進み出た。

 男はヘルメスを指さすと、

「お前!さっきの……ボスの武器を金属に変えたあれは何だったんだ!あんなの……あんなのみたことがないぞ!あれを最初から使っておけば、ディアベルさんは……ディアベルさんは……!!」

 くしゃり、と顔をゆがめた。

「そういえば……」
「あんなスキル、情報屋のガイドブックになんかあったっけ……」

 しまった……ヘルメスはあまりにも遅まきながら、《錬金術》を使ったことを後悔していた。ディアベルの死という状況であれを見せれば、この場にいるプレイヤー達に火をつけてしまうのは明らかだったのに……。

「あははははははっ!」

 作ったような笑い声が響いたのは、その時だった。キリトがゆっくりと立ち上がると、進み出た。

「元βテスター?あんな奴らと俺を一緒にしないでくれ」

 キリトはキバオウの前まで歩みを進めると、話を続けた。

「いいか?SAOβテストは、ものすごい抽選倍率だったんだ。その中に本物のMMOゲーマーが何人いたと思う。そのほとんどが、レべリングのやり方も知らない初心者だった……今のあんたらの方がましなくらいさ」

 そこでキリトは、きっ、と顔を上げると、精いっぱいに邪悪めいた表情を作って(少なくともヘルメスにはそう見えた)言った。

「だが、俺は違う。俺はβ時代、他の誰もたどり着けなかった層まで進んだ。ボスの刀スキルを知っていたのは、ずっと上の層で刀を使うやつと散々戦ったからだ。ほかにもいろいろ知ってる。情報屋なんか目じゃないくらいに、な」
「……()もだ」

 ヘルメスは、意を決して前に進んだ。

「俺はβテスターではない。だが……俺は、キリトなんかより、情報の面で言えばずっとずっと多くのことを知っている。なぜなら……俺は、直接茅場晶彦からこのゲームの全てを聞いているからだ。《錬金術》も奴の共犯者としてもらったものさ……これで、満足したか?」

 ――――なんだよ、それ……

 誰かが、呟いた。

「そんなの、もうβテスターどころじゃないだろ……」
「チートだ。チーターだ。ベータのチーターだ。ビーターだ!!」
「失せろよ!詐欺師!!」

「ビーター
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