暁 〜小説投稿サイト〜
錬金の勇者
6『ビーター』
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まっ」

 ニヤリ、とボスが笑った気がした。コボルド王は、大きく飛び上がると最後の最後で大技を決めるつもりなのか、今までにないモーションを取った。

「しまった!《紫電(シデン)》……」

 キリトが恐らくそのソードスキルの名なのであろう技名を呟くが、状況は変わらない。ものすごいスピードでコボルド王の突進攻撃が始まる。それはキリト達を吹き飛ばさんとスピードを上げ……

「オォォォッ!!」

 ヘルメスによって、止められた。

 ヘルメスは、ただでさえバランスブレイカーな《錬成武器》を使うために、筋力値を優先的にあげている。加えて、レベル17と、この場にいるプレイヤーの中では恐らくレベルが一番高い。「無茶」と言ってもいい激しいレべリングのたまものだった。さらに、現時点ではありえない能力値の錬成武器。

 それがヘルメスをブーストし、ボスの武器を押さえつける。しかし、少しずつ、少しずつ、ヘルメスが押される。

「ヘルメス!?」
「キリト!今のうちに大技の用意をしておけ!!」

 キリトがこくりとうなずく。ヘルメスはグルルル……と唸るボスの顔を真正面から睨み付け、ぎしぎしと音を立てる錬成武器から、片手を離した。とたんに、野太刀が押し込まれてくる。

 いちかばちか。茅場晶彦が《錬金術》に搭載した性能が、自分の能力をより高めてくれることを願うのみ。

「……《等価交換(Equivalent exchange)》――――ッ!」

 瞬間。ボスの刀が、白銀の輝きを放って、半ばから消滅した。代わりに、ヘルメスの手に握られていたのは、黒銀色のインゴット。ボスの手に残っているのは、柄の身になった野太刀。

 《錬金術》の特殊能力の一つである、《無差別錬金》。この世界では錬金術の練度はスキル熟練度だけでなくレベルでも左右されるらしく、ヘルメスはボスの武器を半分融解させるのが限界だ。それに、人前ではあまり《錬金術》を使いたくなかった。

 だが、今ここではそんなことを考えている場合ではない。ヘルメスが動かなければ、みんなが死ぬのだ。

「今だ!キリト――――ッッ!!」
「うおぁぁぁっ!!」

 キリトが全力のソードスキルを放つ。硬直したボスはその攻撃を防御できずに、もろに受けた。V字を描いた《バーチカル・アーク》が、ボスのHPをついに削り取り、その四肢を爆散・消滅させた。

 きらきらとボスの体を構成していたポリゴン片が振ってくる。ボス部屋を照らしていた禍々しい光が消え、代わりに穏やかな灯りがともされる。

「Congratulations。見事な剣技だった。この勝利は、あんたたちの物だ」

 エギルがキリト達に賛辞を送る。それにつられたかのように、プレイヤー達も拍手を始めた。ヘルメスも拍手をしよう
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