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錬金の勇者
6『ビーター』
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ベルが、剣と盾を構えて単身突撃した。本来ならばこの場面は、ボスを囲んで一斉に攻撃するべきではないか……そう考えたその時。

 ディアベルが、一瞬だけ俺に向けた視線に――――俺は、凄まじい違和感を感じた。その眼は、俺に「残念だったな」とでも言いたげだった。

 俺の脳裏に、一つ思い当たることがあった。

 俺は数日前から、一人のプレイヤーに愛剣《アニールブレード》を買い取りたいというメッセージを、《鼠》のアルゴ経由で受け取っていた。1000コル払って彼女に教えてもらった、取引相手の名前は、今俺達と共に戦っている、サボテン頭の男、キバオウ。しかし彼の武器はアニールブレードと(第一層限りではあるが)同等の性能を持つ剣であった。

 そして彼は、俺がβテスト時代に、ボスのラストアタック・ボーナス……通称LAボーナスを取りまくったプレイヤーであることを知っていた。キバオウは反βテスターで、彼自身も恐らくはβテスターではないだろう。アルゴは絶対にβテスターにかかわる情報だけはポリシーを曲げて……ある意味では守って売らないので、俺はずっとキバオウがどこからその情報を仕入れてきたのか疑問に思っていたのだ。

 恐らくは――――キバオウは、ディアベルにそれを教えられたのだ。ディアベルは恐らく元βテスター。仲間、そしてキバオウには恐らくそれを隠していたのだろう。ディアベルは俺が姿は違えど、β時代にLAを乱獲したキリトと同一人物であることを知っていたのだ。そして、俺から《アニールブレード》を取り上げて、俺を弱体化させ、しかる後にボスのLAを取るつもりだったに違いない。LAボーナスによって手に入れられるアイテムは唯一無二の高性能品の為、今後ボス攻略レイドを指揮するに至って、必須アイテムといってもいいに違いない。

 だが、なぜだ……?なぜ、そんな回りくどい方法で……。

 そう疑問に思ったその時、俺は、ボスが腰から湾刀(タルワール)を引き抜くモーションを見た。そして、驚愕にあえいだ。

 ボス、《イルファング・ザ・コボルドロード》が引き抜いたのは、湾刀ではなく――――野太刀だった。つまりあれは、《曲刀》の武器ではなく、その上位のモンスター専用スキル……

「だ……ダメだ!全力で後ろに跳べぇぇぇ―――――――ッッ!!」

 《(カタナ)》専用ソードスキル《浮舟(ウキフネ)》が、ディアベルを吹き飛ばした。幸いなことにダメージは小さい。ディアベルもソレを見て「大丈夫」と判断したのか、空中での戦闘態勢に移行する。だが、うまく剣が振れない。あまり普段は意識しないことだが、剣を振るモーションなどは、基本地面に足をついているから可能なことなのだ。それが不可能である今、ディアベルは剣をうまく振ることができない。

 そしてこの場で、恐らく俺だけが知
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