暁 〜小説投稿サイト〜
蒼き夢の果てに
第5章 契約
第82話 人ならざる者たち
[10/13]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
時の英国紳士の姿。

 ただ……不思議と何処かで出会った事が有るような女性なのですが……。

「おや、私の事はお忘れですか、殿下」

 しかし、そのオスマン老の友人らしき女性が、俺の問いに対してそう答える。
 その時、彼女が発した雰囲気は疑問。試してやろう、とか、からかってやろうとか言う雰囲気などではなく、本当に疑問を抱いたと言う事。

 但し、俺が此方の世界にやって来てから出会った老婦人の中に、彼女のような女性は……。
 そう考えながら、それでも恭しく、その場で一礼を行う俺。
 そして、

「どうやら、悪ふざけが過ぎたようです。まさか、自らの魔法の師を忘れる訳は有りません」

 略式の礼を行い、視線を大理石の床に移したままの姿勢で、その老婦人に話し掛ける俺。

「忙しさにかまけて、脚が遠のいて居た故、少々の後ろめたさから、つまらぬ冗談を口にして仕舞いました。
 お許し下さい。ミス・ノートルダム」

 本当にすらすらと口から出て来る言葉。
 そう、何故か口から出て来る彼女の名前。マリア・ノートルダム。リュティス魔法学院の学院長。オスマン老と同じく年齢不詳、出身地も、出身の家も不明の人物。当然、二つ名も謎。彼女の魔法の系統を知る人物も、記述も存在しない。
 そもそも、聖母マリアが存在しないハルケギニア世界で、マリアのファーストネームも、それに、ノートルダムのファミリーネームも胡散臭すぎます。

 尚、こんな予備知識はタバサからも、そして、イザベラやジョゼフからも与えられては居ません。
 まして、俺はこの老婦人を『ミス』と表現しました。これは当然、未婚の女性に対する敬称。

 何故、そんな事を知って居たのか。……の理由については、一切、判らないのですが。

 その俺の答えを聞いて、表情を変える事もなく、その老婦人はひとつ首肯く。この答えと雰囲気は、俺の答え……。彼女の名前や立場に誤りがなかった事の証で有る可能性が高い。
 そして、その老婦人。ノートルダム・リュティス魔法学院学院長が俺から、俺の背後に送る。
 この方向に居るのはふたり。一人はタバサの後ろに控える赤毛の少女。
 そして、今一人は……。

「彼女がここに居ると言う事は、殿下は私の与えた宿題を見事クリアしたと言う事ですね」

 ……俺の後ろに控え目に佇む黒髪の少女。

「陛下。ようやく、立ち上がる事が出来たのですか」

 その内、赤毛の少女の方は殿下と呼ばれるのが正しい敬称。タバサも同じ。
 ならば……。

 振り返った俺の瞳と、真っ直ぐに俺を見つめる彼女の黒い瞳があっさりと交わる。
 そして、彼女に相応しい少しはにかんだような淡い微笑みを魅せた。

 以前にソルジーヴィオと名乗るニヤケ男が、彼女は古の時代の自ら
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ