第5章 契約
第82話 人ならざる者たち
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ぼ無傷の状態で取り逃がしたに等しい状況ですから、今後、起こり得る事件を考えると……。
正直に言うと、頭がイタイどころか、背筋が凍りそうに成るのですが。
しかし、……と言うべきか、それとも矢張りと考えるべきか。
「あの夜、ゴアルスハウゼン周辺に顕われた魔物の行方に関しては、今の所、一切、判っては居ません」
少し難しい顔をした後に、半ば予想通りの答えを返して来るジョルジュ。それに、あの場に居た俺たちでも、あの時にヤツラがどの方角に向かったのか判らなかった以上、その後に捜査を開始した北花壇騎士団のエージェントたちでも、調べるのは難しいでしょう。
まして、時間帯が時間帯だけに、偶然、目撃者が居たとは思えませんし。
それならば、
「なら、ゴアルスハウゼン周辺で木材を買いあさって居た商人どもから、ヤツラの足は掴めなかったのか?」
元々当てにしていなかっただけに、それほど落胆はなかった答えを聞いた後、次の問いを口にする俺。
それに、こちらの問いの方が答えを期待出来るはずですから、よほど黒幕に近付き易いと思います。
そもそも、あの夜に顕われた自らの事を名付けざられし者だと自称して居た青年の台詞から判断すると、ヤツラの関係者。邪神の信奉者どもがゴアルスハウゼン村周辺の木材のみを買いあさって居た可能性の方が高いと思います。
ならば、そちらのルートからでもヤツらの尻尾ぐらいには辿り着ける可能性は有る、と思いますから。
そんな、少し甘い、希望的観測に基づいた勝手な考えを頭に思い浮かべる俺。
しかし……。
しかし、この会話が始まる前までは柔らかな笑みを浮かべて居た表情をかなり険しい物に変え、ジョルジュは左右に首を振る。
この答えは間違いなく否定。そして、
「その木材の買い取りに関わった商人たちはすべて、不審な死を遂げて居ます」
……と、かなり危険な答えを返して来る。
その瞬間、俺たちが相手にしている存在が、人間の生命など何とも思っていない危険な存在だと言う事を、改めて理解させられる俺。
そう。この世界に俺が呼ばれてから関わった事件の内、どの程度までがあの夜に顕われた黄衣の王の関係者。おそらく、ソルジーヴィオと名乗ったあのニヤケ男もその片割れと言うべき存在だとは思いますが……。あの一党が関わった事件なのか判りませんが、それでも、今まで俺やタバサが関わった事件は、人の生命など何とも思っていない連中が起こした事件なのは間違い有りませんでした。
「現在、捜査を続行しては居ますが、芳しい成果を上げる事は難しいと思いますね」
視線を俺の顔から磨き上げられた大理石の床へと移し、自らの右手で左の頬骨の辺りから口を半分隠すようにしながら思案顔を俺に見せるジョルジュ。
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