第八話 ビュエルバの領主
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犬を捕らえて、ギースに引き渡したそうだ」
表向きは罪人の将軍を帝国に引き渡したという侯爵の忠誠ともとれる内容だ。
しかし同時に侯爵は将軍の生存を知っているということの表明だ。
これでは将軍の生存を公表したとしても大した効果は無いと見るべきだ。
「奴を殺すのは私です」
しかしガブラスはそんなことはどうでもいいようだ。
「・・・見上げた弟だ」
ヴェインが感心したように言った。
恐らくかつて自分が兄2人を断罪した皮肉も混ざっているのだろうが。
「ああ、ギースがラーサーを連れ帰る。明朝ビュエルバを発つそうだ。卿に本国まで送ってほしい。ドクター・シドが来るのでな、外してくれ」
そう言ってヴェインはガブラスに退室を促し、ガブラスはそれに従い扉の方に向いた。
すると初老の眼鏡をかけた人物・・・ドクター・シドが独り言を言いながら入ってきた。
「現物を確認せねば話にならん。ナブディスの件もある。・・・ああ、偽装はしている。馬鹿どもには幻を追わせるさ」
ガブラスは無視して部屋から出ようとしたが
「そうだ、歴史を人間の手に取り戻すのだ!」
その言葉を聞きガブラスは少しシドの方を向いたが直ぐに退室した。
シドは今、ヴェインがそこにいるのが気がついたかのように話しかけた。
「おお、ヴェイン。執政官職を楽しんでいるようだな」
「二年も待たされたのでな。帝都はどうだ、元老院のお歴々は?」
「まめに励んどるよ、あんたの尻尾をつかもうとな」
シドは茶化すように言った。
するとヴェインは楽しげな笑みを浮かべた。
「フッ・・・やらせておくさ」
アルケイディア帝国の前身、アルケイディス共和国の頃は元老院が国を動かしていた。
しかし軍部出身の護民官が皇帝を名乗り国は軍部の独走を許す事になった。
そこで当時法務庁を統括していたソリドール家と元老院が協力し帝国を安定させた。
その後はソリドール家出身の皇帝が四代に渡り政治を行っている。
元老院は政治的決定権を持たないが皇帝の承認権と退任を要求する権利を持っている。
これはかつて軍部が暴走したときの反省のためだが今では皇帝と元老院の対立に利用されている。
「元老院がなにを企もうが同じ事だ」
そう言ってヴェインは再び窓から市街を見下ろした。
「・・・全てはソリドールの為に」
ヴェインは小さい声で呟いた。
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