8章
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とも思わん。関わるな、それだけだ」
用件は無くなった。
「ではな。篠ノ之束にはどうとでも言うといい。彼女には私が何者かはわからんだろうしな」
突き放す、という言い方が正しいのだろう。
私自身、ここまでよく言えたものだと思ってしまう。ただ、以前のままでないことが残念だけだったということだけかもしれないというのに。
家を出て、そこから先はどうしようか。
これまでの目的は果たしている。これからの目的がないが… これからどうしたいという目的がない。
目的がないと、こうも私とは空虚な人間だったのか。
…違うか。私にはそもそも、何も無かったな。
「エミヤシロウ!」
叫び声に近いその声は紛れもなく千冬のもの。
だが、どうしてだろうか。その声には緊迫した色がある。
…先程の会話の中にもあったのだろうか。気が付けないほどに私は我を忘れていたのだろうか。
俯き、その表情は視えず、見えるのは口元のみ。
しかし、彼女が悩んでいるはわかった。
わからない。どうして彼女はそんな表情をしているのかも、それに気がつかなかった私自身も。
人の感情の機微には敏感だったはずだ。
「手を貸して、ほしい…!」
絞り出すかのように、考え抜いた末の結論のように、彼女は口にした。
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